ロンドンは高原の斜面をのぼっていた
★★★★★
ご想像のとおり、ロンドンというのは街です。それが動いてる!?
地球では地殻の大変動が起き、一ヶ所に定住することはできなくなったため、各都市はタイヤやキャタピラをつけて移動できるようにしたのです。静止都市もあって、反移動都市同盟を組織していますが、移動都市は他の都市を「喰らう」ことで淘汰を繰り返しています。
都市が「都市を喰らう」というのは、都市を略奪、破壊、分解、リサイクルして物資を得て、その住民は奴隷として労働力にかえる行為です。複数階層から成るロンドンは、その最下層をガット(腸)と呼び、そこで「獲物」を解体しています。そこで主人公のトムは偉大な冒険家ヴァレンタインと出会います。自分のような史学ギルドの見習いに気軽に話しかけてくれる英雄に感激していると突如、顔にひどい傷のある少女へスター・ショウがナイフを振りかざしてヴァレンタインに襲いかかります。その攻撃はなんとか防いだものの、トムはへスターもろとも地表に突き落とされてしまいます。さて、トムはロンドンに戻ることができるのでしょか。
奇想天外な設定ですが、読み進めるうえで戸惑うことはありません。登場人物たちに引っ張られてストーリーが進んでいくなかで都市の様子などを想像するのが楽しい。「都市が動く」と聞いて「ハウルの動く城」を想像したのですが、ロンドンはもっと大きいでしょうし、煙突から煙が出ているというので動力は蒸気機関でしょうか。いくらキャタピラでも山や谷は移動できないでしょうし、海はどうするのかと思ったら、海を渡ることができる都市もあるようです。いずれにせよ、その世界は地図を作るのがむずかしそうです。(笑)
奇をてらったSFかと思いましたが、これは面白いです! 全4部作の第1弾なので続編も期待しましょう。
ジュブナイルはこうでなくちゃ!
★★★☆☆
地元図書館に無かったので近隣から取り寄せてもらおうとリクエスト出したらナント購入していただけました。 でも、その価値あり!めっさ楽しい!!
日本では文庫で出版されてしまいましたが、本来は児童向けとして書かれたそうで、主人公は少年です。 ジュブナイルはこうでなくちゃ!のスピード感溢れる展開が素晴らしい。続編が待ち遠しい一冊。
しかし前述のように文庫で出ているため、若年層が手に取る確立が下がりそうなのが残念。中学生コーナーに置いて欲しいな〜。
王道だけど
★★★★★
話の本筋は、主人公の少年が繰り広げる冒険譚という意味で王道です。
ただ、60分戦争という未来戦争によってそれまでの科学が崩壊し、CDが見た目の綺麗さから過去の遺物として高値で取引されてたり(正しい使い方は誰も分かってない)、
蒸気を使って大地を走り回る都市が互いに下部のアゴ部分で相手を丸呑みしようとせめぎ合ってる弱肉強食の世界だったり、
それに対して「人間は地に足を付けて生活すべきだ」という思想の反移動都市同盟なるものがあったり、
過去の戦争で使われた人型の兵器があったりと、ラピュタやらナウシカやら、スチームパンクやらの色んな世界観が上手く組み合わさって独自の素晴らしい世界観が出来上がってます。
登場人物も、何やら悪巧みしてそうな市長やら、重い過去を持っていそうな女の子、女飛行船乗り、わけありな感じの高名な史学者に、お父さんの様子が最近おかしいと訝っているその史学者の娘などなど、一人一人の個性が感じられ、個々の行動に躍動感を感じます。
また、訳が非常に良いです。
非常に分かりやすく書かれていて中学生でも読めそう。
でも大人も引き込まれる。
作品は本国イギリスでシリーズ全4作品が刊行されており、日本では3作目が先日刊行されました。
一作目で日本の星雲賞、4作目でイギリスのガーディアン賞を受賞したそうです。
正直、もっと売れてしかるべき作品だと思います。
自分は1作目読了後に気になって、まとめて2、3作目を買いました。
宮崎アニメの影響力
★★★★☆
2007年度星雲賞(海外長編部門)受賞作というので、これを買って読んだ。やけに読み易いな、と思ったら、なんとこれはジュブナイルではないか!確かにアニメ的世界とストーリー展開だ。非常に映像喚起力の強い作品で、宮崎駿の影響が濃厚に感じられる。いろいろなアイテムもそうだし。
設定がかなりとんでもない。スチームエンジンで荒野を疾走する都市という無理矢理なもので、こりゃSFというよりファンタジーで「ハウルの動く城」の超大型版だ。さらに飛行船が飛び交うさまは「ラピュタ」だし、古代テクノロジーの最終兵器は「ナウシカ」だしで、それは確かに〈絵〉になる。とすると〈SFは絵だよ〉の法則によって、これはやっぱりSFだ、ってことに??まぁどっちでもいいか。
少年と少女の辿る数奇な運命。様々な魅了的な登場キャラクター。手に汗握る波瀾万丈の展開。軽く読めて楽しめる。
宮崎アニメテイストな未来冒険ファンタジー
★★★★☆
「創元SF文庫」でもなく、このアラビア風の扉絵でもなければ、児童書としてもっと
売れたのでは・・・と僭越ながら思わずにはいられない。
舞台は巨大な船に似た「移動都市」同士が、地上に残った少ない資源を奪い合って戦う
弱肉強食の世界。こう聞くとピンとこないが、読みやすい文体なので、しばらく読めば
大きな都市船がキャタピラで動き回る様子が容易に目に浮かぶ。
主人公はその都市で働くギルド見習いの少年と、顔に傷跡のある謎の少女。
少年は謎の少女の事件に巻き込まれて住みなれた都市を離れ、旅をするうちに色々な人々と
出会い、悩み、冒険のなかで成長していく。
ほかにも、女空賊のアナや海賊都市の住人、悪徳市長や秘密の多い史学ギルド長など、
個性的な登場人物たちも魅力的だ。彼らとの出会いの中で、主人公が泥の中を転げ周り、
飛行機で飛び回り、ナイフで戦い、走り回る姿はまるでアニメの「コナン」か「ラピュタ」
の世界だ。
頭の中で映像化しながら、キャラクターに好きな風貌を想像して楽しく読了した。
気軽に読めて、大人でも楽しめる一冊だと思う。