本文は良かったけど、後書きで一気に嫌な気分に
★☆☆☆☆
あの時代の一人の貴人の生き方のバイオグラフィとしては、読み易く興味が持てるものでした。
私も前のコメントの方と同じく、後書きを読んで「何だ、結局雅子妃を叩きたくて、これだけの本を書いたのね。何という底意地の悪い情熱」と、一気に興が醒めました。
「お世継ぎ産め」と十数年も圧力をかけられ、やっと産まれたわが子が女児ゆえ否定されれば、心を病むのは当然です。
治療の一環として私的な楽しみをするのが、どこが自己の欲望ばかり主張しているのですか。じっと沈黙を守ってバッシングに耐えているご実家の、どこが悪いのですか。
「未来の皇室の危機感」とは、こんな家に入内しようとする女性なんか、もう二度といないだろう、ということだと思ってました。
工藤様、あなたなら自分の娘を妃に差し出せますか。絶対男児が産めますか。
「女の役目は男児を産むこと」という価値観の方には、お勧めします。
ちょっと嫌…
★★☆☆☆
貞明皇后の伝記です。
とても読みやすく生涯が紹介されていて、現在発行されている貞明皇后の本では一番良いものだと思います。
ですが、随所に現皇太子妃雅子様に対する批判がみられ、落胆しました。
著者である工藤美代子さんの皇室関連の本は、巷に溢れる「皇室の方々をアイドルのように賛美する本」と違い、「ただ一人の人間として、この方の生涯を尊敬する」姿勢がとても魅力的でした。
この本もそういったものだと思い、購入しました。
ですが、読み進めていくたびに「雅子様への批判をするために、貞明皇后の生涯を引き合いにしている(ダシにしている)」ように感じられ、がっかりしました。
純粋な伝記として発行していただきたかったです。
■伝記としては、星5つですが、価格のわりに内容が薄く感じられることと、批判によって純粋に伝記と感じ難いことで、星2つとさせていただきました。
正直、文庫落ち(するのでしょうか?)したものを購入すれば良かったと思っています。
これから読まれる方は図書館で借りることをお勧めします。
皇后とはどういう存在なのか?
★★★★★
大正は15年と短かったが、そのせいだけでなく何となく印象が薄い時代である。また明治天皇や昭和天皇の圧倒的な存在感に比べると大正天皇のそれは小さくみえる。
大正時代は大正デモクラシー、白樺派のヒューマニズム、市民(サラリーマン)社会の出現といった明るいイメージがあるものの第一次世界大戦の勃発と参戦そしてロシア革命と共産主義国家・ソ連の成立、さらには関東大震災の発生など考えて見ると実に多難で激動の時代でもあった。
先に原武史著「大正天皇」が出版されて大正時代に光が当てられるようになって来たが、工藤氏は後の昭和天皇を含めて4方の親王の生母であり、病弱な大正天皇を支えて国母としての役割を立派に果たした貞明皇后の生涯を温かく描いている。貞明皇后は、大正天皇亡き後も戦後、67歳で崩御されるまで、まさに天皇家の屋台骨の役割を果たしてきた。
著者は、その「あとがき」でいう。「国民と苦楽を共にする。そして国民のためにひたすら祈るのが皇后だった。その貞明皇后の志操は、香淳皇后、そして美智子皇后へと受け継がれていった。しかし、この先ははたしてどうであろうか。」
大正のことだけでなく、天皇制度について考える人に是非読んでいただきたい本である。