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The Best American Short Stories 2000

価格: ¥2,688
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Mariner Books
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年に1度の、この読みごたえある短編小説選集の出版が繰り返されるのはなぜだろうか。その答えを探すのは難しい。もともと粒よりの佳作ばかり集まったせいなのか、それとも、今年のゲストエディターが、優れた作品を見分ける才能に特別恵まれていたからなのか?いずれにしても、作品の質が不ぞろいになりがちなアンソロジーでありながら、2000年版『The Best American Short Stories』のできばえは傑出している。今年の編集者、E.L.ドクトロウは、「もしも~ならどうするか?」というタイプの話がお気に入りらしい。つまり、読者の想像力をかきたてる質問を投げ、答えを誘い出すような物語である。ネイザン・イングランダーの"The Gilgul of Park Avenue"は、もしも、WASPの経済アナリストが、ある日タクシーの中で、自分はまぎれもなくユダヤ人であることに気づいたらどうするか、という話。また、ロン・カールソンは"The Ordinary Son"の中で、もし、あなたが金ピカの天才一家にただ1人、ごく凡庸な人間として生まれてしまったらどうするかを問いかけてくる。さらにアラン・ガーガナスの"He's at the Office"は、もしも、戦後アメリカを支えてきた典型的仕事人間が仕事を辞めざるを得なくなったらどうするか、という物語である。本書の最後を締めくくるこの話は、その男の成人した息子によって語られている。物語の冒頭で、彼が父親を散歩に連れていくシーンがある。今でも、父は1950年代のビジネスマンの服装にしっかりと身を包み、キャメルのオーバーコートにフェルト帽までかぶっている。父と息子は、ある10代の少年とすれちがう。「その少年はすれ違いざまににやりとしながら言った。『その格好、イケてるね』」

「父は、意味を説明してくれとでも言いたげに私を見つめた。私はただ頭を横に振っただけだった。父に、うつろいやすいファッションの流行をどう説明すればいいのかわからなかったのだ。私は、こう言うのがやっとだった。『あの子は、きっと父さんが好きなんだよ』」

この親子のやりとりは、本書に収められた作品の特徴を実によく表している。ページが進むにつれ、読者は、明るく、ユーモアにあふれた申し分のない人間同士の付き合いが崩壊してしまったことに繰り返し気づかされる。このほかにも佳作が続く。たとえばエイミー・ブルームの"The Story"は、離婚した悪女を描いた、風変わりなメタフィクションだし、ジェフリー・ベッカーの"Black Elvis"では、タイトルどおり、「黒人のエルヴィス」を取り上げている。また、ジュンパ・ラヒリ(『The Interpreter of Maladies』 の著者)の"The Third and Final Continent"は、マサチューセッツ州ケンブリッジへ引っ越してきたインド人男性の話である。本書自体と同様、ラヒリの物語は、読み進めるにつれ、ほのぼのとしたユーモラスなムードが漂う作品に仕上がっている。