あっと驚く目新しいストーリーではない。しかし聖書の物語「ノアの箱舟」をグラミー賞アーティスト、スティングが語りなおしてみせるこの1冊には、アップビートのリズムが満ちる。読者は瞬時に引きこまれるはずだ。若いヒップな恋人同士が、ある日、不思議な募集広告を見つけるところから物語は始まる。

求む志願船員、
2つとない旅へ。
母なる自然と言葉を交わすため、
大きな木の船に乗り込め。

   2人はタクシーを拾って（聖書ではもちろん「2頭のラクダ」だ）川へ向かい、そこで「あごヒゲの老人」と契約を交わす。その老人は「ラジオで神様からのメッセージを聞いたのじゃ」と言う。続く物語はご存じのとおり。しかし語りは、スティングならではのあのクールなトーンだ。

   スティングは若い世代のために、自らの名曲「Rock Steady」の歌詞を繰り返しはさみながら、ヒュー・ホワイトの描く幾何学的で明るいトーンのイラストを背景に、大昔から語り継がれたこの物語をよみがえらせた。読者は、地球の将来に希望があるか否かはわれわれ次第だ、まだ間に合う、と気づかされることだろう。

   この絵本の売上金は、ブラジルの雨林環境と文化の維持のために作られた「熱帯雨林基金（the Rainforest Foundation）」に寄付される。（Emilie Coulter, Amazon.com）