「古いラブレターがあったので急いで読んだ。そしてすぐにしまい込んだ」といった内容のハイクは、少ない文字数で、意味が感覚的に伝わる。しかし不思議なことに翻訳しようとすると、いくら整理しても日本の俳句のように5・7・5には収まらない。その代わりに、考えれば考えるほど言葉の向こうに広がる景色なり、作者の視線や意図が見えてくる。
また、この程度なら自分にも書けるかもと思えてもくるから不思議だ。たとえ生きている国や場所は違っていても、その日常でのイメージはさほど変わらないということもあるし、透明感のあるものほど共通していると思わされる。
でも、この本がもっと楽しいのは、ラフな感じのする本の体裁で、その中で文字がチャーミングに紙面を飾っているということだ。持っていてうれしい本というのがある。これはまさにそんな本のひとつ。いつどこでページを開いても心を柔らかくしてくれる作用があると言ってしまいたくなる。(永井 宏)