「知らない」という意識さえ乏しい「アイヌ」民族について
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日本は「単一民族」国家であるという発言がどれほど「アイヌ民族」の心を傷つけているか。また、北海道=観光=アイヌなどという時代もさほど過去の事とは言えない現実がある。
書名にやや不満があるが(今はやりのソフトな題名が欲しいほどの内容である)さほど多くはない、アイヌ民族についての書籍の中で出色の入門書である。著者のアイヌ民族に対する思いがひしひしと伝わってくる。Q and A 形式も分かりやすいし、適当なルビの振り方も理解を助ける。形式を補う引用文献の紹介もていねいである。
「人権の世紀」が始まったという、しかし国連の「国際先住民年」を過去のこととして忘れてはならない。貴重な蔵書の一つにこの書を加えられたことを誇りにしたい。まず一読をお薦めしたい価値がある。
2003年1月‾2月の内閣府実施の「人権擁護に関する世論調査」の結果報告書によると,「人権課題に関する関心」選択肢(女性・子ども・高齢者・障害者・同和問題・アイヌの人々・外国人・HIV感染者・ハンセン病患者,元患者・刑を終えて出所した人・犯罪被害者等・インターネットによる人権侵害)の中で「アイヌの人々について」が最も関心が低くわずか5.4%(しかも選択数自由という設問で)となっている。歴史の流れを背景とした人権課題への関心がいずれも低い数値である。今,アイヌの人々の人権の歴史的課題を本書から学びましょう。