アカデミー賞外国語映画賞を受賞、この第一級のサスペンスはベルトリッチの『暗殺の森』やコッポラの『カンバセーション・盗聴』のように、カー・チェイスよりも人間ドラマ志向だ。舞台は東ベルリン、時は1984年。すべては単純な調査の任務から始まる。ゲルド・ヴィースラー大尉(抑えていながら深く感情を込めた演技のウルリッヒ・ミューエ)は国家保安省シュタージの一員。この手の仕事のスペシャリストだ。有名な劇作家ゲオルク・ドライマン(セバスチャン・コッホ、『ブラック・ブック』)とその恋人で女優のクリスタ=マリア・ジーラント(マルティナ・ゲデック、『マーサの幸せレシピ』)を監視することになる。ドライマンはブラックリスト入りしている演出家アルベルト・イェルスカ(フォルカー・クライネル)のような反体制派と関わりがあることで知られているが、記録には傷がない。だが、この実直に見える市民を監視する隠れた動機がヘムプフ大臣(トーマス・ティーメ)にあることがわかり、すべては一変する。すなわち、この監視には個人的な理由があったのだ。こうしてヴィースラーの共感の対象は政府から国民へ――少なくともこの一個人へと移行していく。危険は承知の上で、ヴィースラーは特権的な立場を利用しドライマンの人生を変化させる。ここでヴィースラーがおこなう神のような行動は些細で誰にも知られないものかもしれないが、すべてに大きな影響を与えるかもしれない。ヴィースラー自身に対しても。監督・脚本のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクは単純な設定から始めて、複雑な状況と感情的な関わりへと発展させ、見事な長篇第1作を展開させる。3つのエピローグはどう考えても多すぎるが、『善き人のためのソナタ』は全編にわたって気品があり、混乱のない映画だ。ヒューマンドラマの傑作。(Kathleen C. Fennessy, Amazon.com)
当時の混沌としていた時代背景と真実を濁す事なく表現している映画作品。
★★★★☆
ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツに実在した、ソ連の秘密警察組織「シュタージ」の諜報部員と、
一人の劇作家を中心に繰り広げられる当時の監視社会の実像を描いたお話。
冒頭で冷徹であった諜報員のヴィースラー大尉が、反体制容疑をかけられた劇作家ドライマンを取り巻く
恋人や友人達とのやりとりを盗聴という形で聞き入り、次第に心惹かれていく様がとても印象に残りました。
彼らを取り巻く人々が救われたかどうかは視聴後も判断しかねるのですが
この作品の題名に間違いは無いという事は確かでした。
宣伝が入ってて興ざめ
★★★★☆
このタイトルの廉価版が出たらしいが、こちらのパッケージ写真が気に入ってるので、少々高くても無理してこちらを買ってみた。高い割りにはしっかりと他DVDの予告宣伝が入ってて、こういうのはレンタル専用discだけなのかと思っていたので、ちょっとガッカリ。予告は入れないで欲しかった。セルもレンタルも関係ないんですね。
本作は良作なので買って良かったと思いますが、このメーカーのDVDはどれも高いので、なかなか手が出せないです。
Be True!
★★★★★
思想とは洋服のように身にまとうものであって、時がくればいとも簡単にそれを脱ぐことができる・・・それは時に内因的に発生するが、多くの場合この映画のように外因によるケースのほうが多い。
"The Lives of Others"...他人の人生をのぞきこむ・・・この手のplotの作品はサスペンス・ドラマの映画としては多いかもしれないが、この映画は既存のどの作品とも違う傑作。BeethovenのAppassionataの旋律が劇作家と女優とエージェントとの間に流れるとき、東西冷戦の象徴である壁が崩される前の時代に、芸術の力が試される。人間としての誠実さとは?芸術の意義とは?など、考えてみる価値のあるテーマが織り込んである。たまには、ひとりでこういう映画もどうだろう。
ドイツ映画は『ラン・ローラ・ラン』『es』以来だったけれども、やっぱり暗いが、重厚で静かな感動が押し寄せてくる。
とてもよかった
★★★★★
僕は文章がへたくそなので詳しいことは他の皆さんにお任せしますが
これまで観た映画の中でも最も心に残る映画になりました。
本当に人生に潤いを与えてもらえました。
たまに無性に観たくなって何十回も繰り返しみましたが毎回感動して涙が出ます。
ミイラ取りがミイラに
★★★☆☆
ドイツを二分していた壁が壊される数年前の東ベルリン。
社会主義を保持しようと、国家が厳しく思想統制をしている中
国家保安省のエージェントが、ある劇作家を監視対象にするが
彼らの生活を覗き見るうちに、だんだんと影響を受けて
ミイラ取りがミイラになってしまう。
鉄壁の男だったエージェントが、次第に脆さを表わしてくる描写も
秀逸だったけど、一番印象に残ったのは恋人の女優。
愛する劇作家を助けたい気持ちもありながら、自己保身で
流されてしまうところが、すごく人間くさかった。
終盤で、自分の地位や立場を捨ててまで自分を守ってくれた
エージェントに、あえて声を掛けずに去って行った劇作家が
数年後、彼にしか出来ないやり方で感謝の意を伝える。
それに対してエージェントが言ったラストの台詞・・・
心に響く映画でした。
同時期の東ベルリンを舞台に、同じく壁の崩壊を題材にした
『グッバイ、レーニン!』はあんなに温かく微笑ましく描かれているのに
対照的です。