死体からこそ、人間模様の真の姿が見えてくる。
★★★★★
監察医として二万体以上のご遺体を解剖した井上氏。
死体を通してからこそ分かる人間模様が実に真実を映し出しており、読んでいて人生勉強になった。
正に、「死から生を見つめる」仕事こと監察医である。。。
死体が語りかけてくる言葉
★★★★☆
死体に関する本として、いささか遠慮したいタイトルだと思われるが、そんなにグロい描写はないので、読みやすいと思う。
ただ、切なくなって涙が出てきてしまうこともあるが。
愛情が絡んだ殺人事件、金銭が絡んだ殺人事件、幼児虐待事件、この世の無情と裏切りの中でも、愛があったことがひしひしと伝わってくる。
まるで自分もそこにいたかのような感覚に襲われるものだから、妙である。
ノンフィクション礼賛!
★★★★★
上野氏の「死体シリーズ」「・・・語る」「・・・生きている」「・・・知っている」はわたしをノンフィクション作品大好き人間にしてしまった名著ばかりだ。
ノンフィクションの良さは情報量の多さにある。文学作品や小説など足元にも及ばないのは当然だろう。そして監察医からみると死体は語り出したり、生きていたり、知っていたりする。その迫力たるや最近のCG映像を駆使したアクション映画さながらのものがある。
本書は「涙」という死者とその遺族の悲哀をテーマに話が構成されている、著者自身が現実に涙した内容だと思えるが、著者自身が再三語るように死者の代弁者が監察医なのだ。
死体は話したりしないが、著者の手にかかると語り始めるのだ、「わたしの悲しみをわかってください」と・・・
「死んでも名医にかかれ」「死者にも『人権』がある」は著者の名言であるが、口封じをされた死体が著者(監察医)の手によって「涙」の理由を語り出す。「死者の側からみた『医学』」がここにある。