政局が混迷を極める、というより、政治なんてあるのかな的いまのこのタイミングでこの作品が出るという辺り、制作側の意図を勘ぐったりもしてしまうわけですが、ともあれ、本当に他の方もおっしゃっている通り、やっと、やっとのDVD化です。嬉しい。

常に前を、その先の完成形を追求する三谷さんにとって、過去のドラマ群はおそらく観て満足するよりも悔やむことの方が多いのだろうと思います。このドラマもまたその例外ではないでしょうけれども、少なくともこの作品を通して三谷さんが言いたかったことの本質とその純粋を、私はとても愛しているし、だからこそこの作品が大好きです。三谷さんいはいつでも、どの瞬間も三谷幸喜であることを貫いている。合い言葉しかり、総理しかり、宇宙しかり、です。

古畑しか知らない、THE 有頂天ホテルとマジックアワーしか知らない、という方にはもしかしたらつまらないと感じられるかもしれない。感じ方は観る人の数だけあるべきです。外ならぬ三谷さんがおそらくそういう観方をこそ望んでいると思います。だから観ないで決めるのではなく、一度観てみてほしい、と思います。

子供が胸を張って、大きくなったら総理大臣になりたい、という国をつくらなければならない、というのは、たしかに正しいと私は思います。

古畑任三郎の第２シーズンの成功で、人気脚本家としてスターダムを駆け上った三谷先生は、本来の彼の嗜好を反映した番組を作らしめる存在となっていたのが、90年代後半。しかし、それらの作品群は、視聴率として失敗が続き、作品も何ら復活しない時期が続いた。

しかし、生誕50周年だそうで、先生の作品が相次ぐ2010年に、「竜馬におまかせ」のＣＳ放送の他、「合言葉は勇気」に続いて、本作もＤＶＤ化された。こうなると本作ヒロインの鈴木保奈美の夫が、当時トップ女優だった飯島直子と共演した「今夜、宇宙の片隅で」のＤＶＤ化も近いのだろう。

しかし、どうみても三谷マニアにしか本作は勧められない。その後に先生は、映画化という舞台に近い形での作品化に気付くが、演劇出身にして大河マニアの先生の作品は、１クールの連続モノには不向きで、実際のところ、成功作が少ない。場面場面での気の利いた台詞や脇を固める人達の好演もあるが、それではストーリーそのものや主演の外し方は補えない。
まぁ、低価格なので、自分は「裸の王様」でない（ブランドネームを盲信しない）と思う向きには、リスク覚悟で買うこともあろうが、この作品を当時見て心に残った者以外には普通に進めない。そんな金があるなら、先生の舞台作品や「新撰組！」なり「三重士」を観る方が、よほど正解です。

そうそう、なぜか先生がご執心の鈴木保奈美の演技と言うのは、来年の大河ドラマでの市を観る前に、心の準備として見ておいた方がいいかもしれません。

視聴率が芳しくなかったようで三谷ドラマの中では黒歴史化されている感のあるドラマですが中身は素晴らしい出来です。
ほとんどが総理官邸または執務室内で限られた登場人物のみで進行するシチュエーションコメディの王道。
史上最低の総理という建前ですが、このドラマ以降このドラマの主人公の総理以上に最低の総理を経験してるだけに、設定は今となっては微妙。
木村拓哉氏が「CHANGE」で型破りな総理大臣を演じていましたが、それを上回る型破りぶりを見せてくれます。
出演者では、小松政夫氏と松金よね子氏が絶品。SP役の二瓶正也氏も素敵です。
芸達者な俳優たちの最高のアンサンブルを楽しめる一作です。