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The Noonday Demon: An Atlas Of Depression

価格: ¥3,429
カテゴリ: ハードカバー
ブランド: Scribner
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   「うつ病」。それはときとして患者に実際の年齢を超えるほどの人間的な深み、つまり地獄を経験した者にしかわかり得ない何かを残してゆく。『The Noonday Demon』は、多くの人が苦しんでいるにもかかわらず正しく理解されていないこの病の実体に、包括的な分析で迫った。著者アンドルー・ソロモンは、うつ病に対して、あらゆる分野―― 科学、哲学、法律、心理学、さらには文学、芸術そして歴史まで―― で考察されている意見やいわゆる「答え」といったものをひとつひとつ検証し、「うつ病の本質を探る」という地図なきイバラの道を、少しずつ進んでゆく。そして綿密で多岐にわたりながらも見事にまとめ上げられ、思わず引き込まれてしまうような本著を成したのである。

   一見なんの変哲もない各章のタイトル(たとえば「Breakdowns=神経衰弱」「Treatments=治療」「Addiction=中毒」「Suicide=自殺」)は、実際には膨大な著者の知性を、さりげない仮面の下に隠している。故に本書は、流し読みをする本ではない。とはいえソロモンの卓越した表現力や主題の扱い方は、洗練された言葉遣いや情感のこもった表現とあいまって、頻出する資料や詩、引用などをも、待ちわびていたディナーの客が姿を現したときのような気持ちで読ませてしまうのである。

   自身も長い間重度のうつ病に苦しんだソロモンは、その経験を読者と共有することをいとわない。最新の治療方法やさまざまな薬に関する情報については、彼自身が試した経験を踏まえて、詳細に述べている。また、新しく開発した抗うつ剤のプロモーションとして製薬会社が試みた奇想天外なステージ(ピンクフロイドやキックダンサーズなどが参加した)の話や、いくつもの精神病院へリサーチのために行った際の記録も公表している。そしてそうした病院で長いこと過ごすくらいならばむしろ、あらゆる次元の個人的な絶望と向き合った方がましだと思ったことなどが語られている。こうしたエピソードもソロモンにかかると、ただのショッキングな話にとどまるのではなく、うつ病がいかに社会的な枠組みを超え、人によって実にさまざまな形で発症し、もはや政治的側面も持つまでに至ったのだということを、白日のもとにさらす一助になるのである。

   うつ病は、良くなったり悪くなったりする。しかし絶対に根治しない。しかし、ソロモンを見れば明らかなように、希望は、「道」―― いかに「うつ」とつき合いコントロールしていくか―― を見つけることによって見えてくるのである。