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何もかも憂鬱な夜に

価格: ¥1,260
カテゴリ: 単行本
ブランド: 集英社
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事実は小説よりも奇なり ★★★☆☆
筆者は敢えて小説は読まないようにしている。実際いろんなノンフィクションものと読み比べて(といっても小説は圧倒的に少ないが)みるとタイトル通りだからだ。
本書もご多分にもれず、作られた作品だなぁということを実感しながら読み進めた。まさしく憂鬱な夜長にはぴったりで、早めにベットに潜り込めば午後のうちに読み切れる短編作品だ。
死刑制度に触れる内容が多少あるが、あまりにも浅薄でやはりホンモノのレポートやドキュメントに作品にはかなわない。ここでも”作られた主人公とストーリー”を意識させられた。
極限状態の心理描写などきっと言葉では紡げないだろうとおもう。それだけ人間心理は複雑だ。
まさかだからこそ作者は極限状態を避けようと”憂鬱”という表現をしたのだろうか。そうであれば5つ星を点けなくてはならないが・・・
憂鬱もまた独善からくるのかもしれない... ★★★☆☆
語り手は拘置所に勤める刑務官。
彼は常に自身の存在価値が確信出来ずにいる。自分の本質から逃げ、本来の自分を偽って生きているのではないかと感じながら(本人が言うところの)「揺れながら」生きている。
現在の彼という人格を形成する周囲の人々の中には、自殺した友人、死刑制度を問い直す上司や、メンターとも言える人徳者たちもいた。

そんな彼が、虐待とそれに抗うことすら思い及ばない無力感の中で生きてきた20歳の殺人死刑囚と接することで、存在意義を過剰に追い求めるよりも、連綿と受け継がれる生命を連鎖を繋ぐ役割を自分も担っているのだという事実をこそ真摯に自負すべきだと気付いていく。

そして彼は、期限が迫っても控訴しようとしない死刑囚に、かつて自分を救ってくれた人の言葉を思い出し伝える。
「生体の発生から現在の自分に到るまでを繋ぐ長い線ともいえる生き物の連続は、途方も無い奇跡の連続でもある。全てが、今の自分を形成するためだけにあったと考えてもいい。」
だから
「重要なことは、お前は今、ここに確かに居るってことだよ。お前はもっと色んなことを知るべきだ。どれだけ素晴しいものがあるか、どれだけ綺麗なものがあるか、お前は知るべきだ。命は使うもんだ。」
それは、自身への確認でもあったのではないだろうか。
何もかも憂鬱な気分に― ★★★★★
久世番子さんの同級生としても有名な、芥川賞作家の最新作は

刑務所に勤める刑務官を主人公にした作品。


「ある理由」から孤児院で育ち、

現在は刑務官として勤める主人公が

様々な罪を犯した受刑者たちと接する日常。

そして、その中で生じる繊細な内面の変化を、重厚なタッチで描きます。


主人公と深い関係を築く

新婚夫婦を刺殺した未成年の死刑囚、

仮出所後、すぐに逮捕された受刑者など



様々な人生を負った受刑者たちの話はとても印象深いのですが、


とりわけ心に残ったのが、

先輩の刑務官が語る「ある死刑囚の最後」。


死を前にしたとき人はどのように行動するのか

ドキュメンタリーやルポが描きることのない人間の複雑さを

芥川賞作家の筆力が見事に照らし出します。


もちろん、こうした深刻な描写の一方で

物語そのものの面白さ(物語力)も健在。

何もかも憂鬱な気分になりながらにせよ、最後まで読みきることができたのは、

本作の「物語力」があったからこそだと思います。


死刑や刑罰の意義を真正面から問いかける本作。

どんなに楽しい気分で読み始めても

なにもかも憂鬱な気分になること間違いありませんが

裁判員制度が始まる今だからこそ

多くの人に読んでいただき、罪や刑罰について考えるきっかけにしていただければと思います
湿度の高い小説 ★★★★☆
刑務官の僕が犯罪者と自分の内部とを行き来しながら見ているもの。
連続婦女暴行事件の犯人である佐久間が言う言葉
「倫理や道徳から遠く離れれば、この世界は、まったく違ったものとして、人間の前に現れるんです。まるで、何かのサービスのように」(102頁)
倫理や道徳から遠く離れてしまっている犯罪者と、主人公である僕との境界線が、他でもない僕の過去にある。
狂っているとしか思えない犯罪者と、狂っていたとしか思えない過去の僕。
人間が決められる領域じゃない死刑と執行する刑務官が抱える心の闇。
雨の中で閉じ込められた室内のように、湿度を感じる小説だった。
もっと憂鬱でもよかったか ★★★★☆
肉体と精神あるいは行動と意思が乖離ぎみのテンション低めトラウマ強めの主人公のまわりで、暴力とセックスが過剰ぎみに発生し、人間の存在価値や罪悪の問題が問われるといった「中村文則」的な作風は継続されつつ、今回は「死刑」のあり方が中心的に扱われている。罪を犯し死にゆく者の心理や態度に焦点が当てられるだけでなく、この制度をめぐる問題点や、何よりこの究極の法的制裁に立ち会う職員たちの逡巡がよく描写されている。自殺した親友や、人徳者である恩人から主人公が受けている影響が、あまりにも単純な感じがして深みに欠けるように思われたのは気になったし、またこの著者にしては驚くほどわかりやすい「解決」が結末の方でもたらされたのには少々興ざめしたが、少なくとも最後まで退屈しない物語のスリリングさと文章に込められた思想の重みはあったように思う。