義姉の秘密を乗り越えて想いを固める主人公
★★★★☆
全体に漂う雰囲気こそ前2作とほぼ同様ながら、本命たる義姉の秘密によって主人公に若干の焦燥感を与える変化球を盛り込んだ作品。週末になると派手な装いで出かけていく義姉(未亡人)を不審に思う主人公。全体としては明るい雰囲気の中に挿み込まれる一点の曇りみたいなものだし、これを中和する義姉の心情描写もあるのだが、この秘密が気になって読み手も一緒に少し煽られる構成には深草潤一作品(二見文庫)でよく見られるものを感じた。実際、義姉の秘密というのは結構好き嫌いの分かれるものだったりする。また、今回はいわゆる火遊びではなくマジに恋するサブヒロインが出てくるため、これにどう対処するかという主人公の決意が試される場面もある。これまでにも似た展開はあったが、今回は主人公の想いを固めるためにやや強調されており、結果として終盤の現実的な展開が弓月誠作品(フランス書院文庫)っぽくなっているように感じた。切なくも美しい心と体の交流ながら、ちょっとやるせない色合いも滲み出ている。他にも妖艶なマダムっぽい熟女や、逆に少々幼さの残る大学教授といった女性陣が出てくるのだが、正直ちょっと多い気もした。何しろ今回は物語としての終着点に至るのが遅いため、例えば前作『叔母とぼく−甘美な同棲』にあったような、本命ヒロインとのめくるめく交わり三昧な日々が少なく、この点において非常に残念なのである。その代わり、義姉の秘密を逆手に取った情交がクライマックス的に描かれて興奮度も増すのだが、これもまた読み手によっては複雑な思いに駆られる演出なので、2人の繋がりこそ強いものの何とも言えない読後感にもなったりする。要するに、ある性癖を元にした演出が、誘惑系、とりわけ生粋の純愛甘々系愛読者にとってはちょっと気になるんじゃないかなーという感じがしたのである。