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Jewish Self-Hatred: Anti-Semitism and the Hidden Language of the Jews

価格: ¥3,674
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Johns Hopkins Univ Pr
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   ユダヤ民族は135年、ローマ帝国により祖国イスラエルを失って、1948年に祖国を再建するまで、ヨーロッパを中心にディアスポラ(民族離散)の状態を生きてきた。本書は16世紀から20世紀までのドイツ語圏に焦点を当て、キリスト教徒社会に差別されていたユダヤ人がいかに自分たちのアイデンティティーを保持してきたかを、有名なユダヤ人たちの著作を分析して考察した「心理史」である。

   著者は、米コーネル大学のドイツ語、中近東言語と、心理史の教授。題名の「ユダヤ人の自己憎悪」について著者は、制度化された差別と反セム主義(反ユダヤ主義)に対抗するために、キリスト教徒社会における「良いユダヤ人」であろうとした一部のユダヤ人が、別のユダヤ人集団を「悪いユダヤ人」として設定した、いわゆる民族内の差別意識、と定義している。

   紹介されるユダヤ人は、西洋文化を代表する文化人ばかりである。ユダヤ人をドイツ文化に同化させる「ハスカラ運動」をはじめたモーゼス・メンデルスゾーン(作曲家フェリックスの祖父)は、ユダヤらしさを強く保持していた東欧ユダヤ人を蔑視した。詩人のハインリヒ・ハイネは、東欧ユダヤ人を嫌悪しながら、同化ユダヤ人に対してよりも親近感をもつ、愛憎交錯感情があった。思想家のカール・マルクスは、ユダヤ文化に関心をもたず、ユダヤ教を資本主義と同一視して敵視した。心理学者のジグムント・フロイトは、同化ユダヤ人のドイツ語にイディッシュ語(ユダヤ・ドイツ語)の語彙、用法があるのを発見し、これをユダヤ人のアイデンティティーを示す「隠された言語」と名づけた。著者はこの概念を本書で応用している。また作家のフランツ・カフカは同化ユダヤ人が失いつつあったユダヤらしさを東欧ユダヤ人に見いだし、「隠された言語」を駆使して作品を書いた。

   ホロコーストによって中欧、東欧のユダヤ人社会は廃絶し、イスラエルは復興した。しかしながらディアスポラのユダヤ人社会はアメリカに移植され、結果、「自己憎悪」と「隠された言語」の伝統は健在だ。長い民族離散状態を生き抜いてきたユダヤ人の歴史を、心理学、言語文化から探求した異色の研究書である。(川村清夫)