最後までドイツ軍と行動を共にした同盟国パイロットたちの空戦記
★★★★☆
この本はロシア侵攻後のハンガリー空軍パイロットたちの空戦記を時系列で追った記事とエースの搭乗機のカラー側面図で構成したもので、他のシリーズと同じ構成になっています。
ハンガリーのパイロットたちの撃墜スコアはドイツは勿論、フィンランドやルーマニアのエース程のハイスコアではありません。初期の主力戦闘機レッジアーネRe-2000の信頼性の低さも一因かもしれませんし、前述の両国と異なりソ連との間に大きな利害関係の対立もなくこの戦争に乗り気では無かったのも一因のようで、1943年頃には早くも戦争からの離脱を考え、秘密裏に連合軍と停戦交渉をしていましたが、ドイツ軍に察知され、ハンガリー政府の要人は拘束され、代わりに誕生した親独政権によって結局欧州の戦闘が終わるまでドイツ軍と共に戦闘を続ける悲劇を味わいます。ハンガリーのパイロットたちの相手はソ連軍(初期は空戦よりも飛行場にソ連戦車が突入するという事態もあった陸戦の方が問題であったそうですが、後にソ連戦闘機も手強くなり特にLa-7は強敵と考えられました)と米第15空軍(爆撃機は勿論、護衛のP-38、P-51)ですが、苦しい戦いであったことがわかります。しかし、苦難はこれだけで終わらず、戦後も共産主義政権によって処刑、軍からの追放など過酷な運命を負わされたのは枢軸側についた他の東欧諸国のパイロットたちと同様の内容になっています。
また必ずしも良好とは言えないドイツ軍との関係や彼らのメッサーシュミットMe-109G-6はレトロフィットでG-14仕様になっていたなど興味深い記述もあります。
それから、ハンガリーのパイロットは第2次大戦開戦前にスロバキアとの国境紛争で既に若干の戦果をあげていますが、同シリーズのスロバキア・ブルガリアのエースの本と内容が重複する為か割愛されています。