細胞夜話
★★★★☆
哺乳類細胞,昆虫細胞から酵母〜大腸菌までの広範囲に渡って、通常の研究室では耳にすることのできない「細胞の歴史」を親しみやすい文章で書いてあります。細胞を用いた研究に携わる方々にとって、まさに「おやすみ前の cool down」になるお勧めの一冊です。
読みやすく学術的価値の高い細胞を知るための良書
★★★★★
研究室で誰も知らないことを私に教えてくれる本です。ベストセラーに釣られて読んだら何だか趣旨の釈然としないエッセイだったりする迷作?が少なくない昨今,本書は細胞に関する研究史を極めてわかりやすく表しておりその具体的記述に富んでいます。歴史的な偶然のひらめきに纏わるserendipityにとどまらないありのままともいえる描写が多いのも魅力的です。著名な研究者に直接interviewする頻度がこれほど高い本が他にあるでしょうか?さらに,一次資料(原著論文)に基づいた記載に関しても学術性が高いといえますが,わかりやすい文体と随所にあるしゃれたイラストが本書をいたずらに難しくせず,なかなかに親しみ深いものにしています。本のサイズも持ち運びに手ごろで体裁も気が利いており,研究者のみならず生物に興味のある幅広い読者層にとって価値ある良書です。
細胞にまつわるのクロノロジー(chronology)の秀作
★★★★★
クロノロジーとは特定のテーマについてその歴史を整理する学問です。本書では培養細胞を中心に、名前の由来、どのように培養や遺伝子操作の技術・方法が確立されたか、などについて述べられています。と、いうと堅苦しく感じられますが、文体は非常にわかりやすくユーモアもあり(イラストも楽しい)、それぞれのトピックも簡潔で気楽に読める一冊です。また、淡々と事実の紹介をしている故に胸を打たれる文章にも出会います。
取り上げられた内容について、一次資料(引用文献)がきちんと示されているだけでなく、発見・開発に携わった研究者に直接取材も行っており、筆者の誠実な態度に頭が下がる思いです。また、専門用語等の説明が不足かとも感じましたが、ある程度読者にも自分で調べる・考える努力が求められることも本書の魅力かもしれません(いまどきの「わかりやすい」本やテレビにはウンザリさせられることもありますので)。
科学史分野の本としては朝永振一郎先生の名著「物理学とは何だろうか」、類似の分野なら丸山工作先生の「新インスリン物語」が思い浮かびます。それらに匹敵する名著、といったら褒めすぎでしょう。しかし、間違いなく秀作です。
筆者は「科学に興味があり、専門家になるかも知れない人」を想定して書かれたそうです。本書には物事を成すためのヒントがいっぱい詰まってます。登場する研究者の熱意、努力、幸運とそれをモノにする「準備された心」のエピソードの数々。これらは、専門家や専門家を目指しながら果たせなかった人、いや、どんな仕事をしている人にも勇気と元気を与えてくれるでしょう。