資本主義は民主主義の土壌があったからこそ現在のレベルにまで発展したが、グローバル化した資本主義はいまや「市民社会」と「公衆」という概念を脅かしつつあると著者ベンジャミン・バーバーは主張する。さらに同質化と統合を好む近年の我々の思考は、世界のいたるところに拠点を構え、通信と情報によって世界を均一化する多国籍企業の経営理念と何ら変わりないと指摘。また「自主決定」こそ民主主義のもっとも根本的方針ではあるが、それを野放しにしておくと「公平な扱いを受けるのは事実上一部の国内エリートだけ」というボスニア、ルワンダなどに代表される極端な民族主義を招きかねないと警告する。
バーバーは解決方法として「市民社会」を復活させ民主主義の基盤に置こうと訴えている。それは投票するところでも売買するところでもない。緑にあふれ、法による強制ではなく自発的に活動する集団が存在し、隣人と地域社会の問題について話しあう教会や学校がある場所、すなわち正しい「公共的な感覚」が育つ社会なのだ。