デザインから考えるものづくり
★★★★★
バタフライ・スツールや高速道路トンネルの設計などを手がけた柳宗理と柳工業
デザイン研究会を中心に、主な仕事である被創造物の写真、民藝とモダンデザイン
についての柳氏の思想、過去の展示会風景、そして関連の略年譜が収録されています。
中でも柳氏本人の文による「デザイン考」は柳氏と柳デザインの真髄がシンプルに
書かれており、ご一読いただきたい項です。
立場によっては異論もあるとは思いますが、そこには、「デザインの至上目的は、
人類の用途の為にということ」とデザインを定義付け、生み出すプロセス、科学的
知識・技術の重要性、そして、それらデザインされた創造物はデザインの延長線上に
あるべきで、また民藝にも繋がるアノニマス・デザイン、つまり「用に徹して
作られた美しいモノ」は社会性や伝統に裏付けられているものである、との論が
展開されます。
オーバープロダクションとも言える現代において、今後はユニバーサルデザインに
ついても考慮される傾向にあると思いますが、そのような環境において様々な
ステージで工業製品の創造を支える人々にも参考になると思われ、広く手に取って
いただきたい書だと思います。