軽く読めるようでいて、読者の中に間違いなく「なにか」を優しく、残していってくれる小説。こういうのも、「文学」というのだろう、と思った小説でした。
約十年後の日本、限りなく現実に近い町。おそらくもうじき、この小説に出てくる技術は実用化されるでしょう。そしてこのお話のように、上手く利用できていければ……、間違いなく未来は明るい。けれど、それをそのまま裏返した筋書きになっていたら……。やっぱり、これは文学なのです。
人がまず先にある。道具はあくまでも、道具。
当たり前のことを優しく気付かせてくれる。
ユビキタスについての理解を深めることができて(なんと用語集まで!)そしてとにかく、優しい気持ちになれる「文学」です。