この時代をこうまで面白くできるとは・・・・さすがは黒岩重吾
★★★★★
六世紀前半、古墳時代中期の倭(日本)。空席になっていた大王位に名乗りを上げた
男大迹王(継体天皇)と、それに抵抗する豪族たちの策動、そして智謀の氏族・蘇我氏を
率いる稲目の戦略が絡み合い、各氏族の生き残りを賭けた熾烈な攻防戦が描かれる。
歴史小説ではあるが、時代が時代だけに作者・黒岩重吾の想像によるところが大きい
作品でもある。蘇我氏は百済からの渡来系に設定されているし、22代清寧から25代
武烈までを実在の天皇とは認めていない。また継体以降を新王朝と規定するなど、
大胆で独創的な黒岩史観に基づいていることは承知しておく必要はあるだろう。
とはいえ、この時代をここまで面白く読ませてしまうのはさすがは黒岩だなと感心する。
男大迹王は人望に富み、知略に優れた人物に描かれ、一方の稲目は狡猾ではあるが、
人間くさい面もあって魅力的だ。男大迹王と稲目の策謀バトルは、乙巳の変まで続く
大王家VS蘇我氏の確執を暗示させて興味深い。蘇我・物部・大伴・平群などの豪族が
大王位を巡ってどう決着をつけるのか?異色の歴史小説はしっかりと読ませてくれる。
謎の大王・継体
★★★★☆
大王位の空位、畿内豪族の勢力争い、高句麗の南下による百済の逼迫、筑紫君磐井の乱。古代の日本を襲った激動の時代に、なぜ越の継体が大和入りできたのか。
謎の大王「継体天皇」の即位までの経緯を、当時の国際情勢や国内事情まで睨んで、著者の推理で一貫して書いた物語。分量が多くて少々辟易したが、人間の心理を巧みに描ききっていて読んで非常に面白かった。
古代史の謎が一杯!
★★★☆☆
謎の継体天皇の時代に、後の蘇我氏隆盛の基を築いた蘇我稲目について書いた、作者の知識と想像をふんだんに駆使した力作である。
継体天皇が北から南下して、大和に入ろうとする時代、稲目は自己の智謀で、大和の豪族達、そして、継体天皇までもを翻弄する。
己の妻達をも政略の道具とし、他人に貢ぐその姿は、節操がなく、滑稽で、親しみさえ感じる。稲目に対して、口癖のように、どこそこの姫に早く子供を孕ませよ、と命令する父親の蘇我駒も良い味を出している。そして、『首長である父にまず相談し、敵にご自分の妻を売ってはいけませんと』進言する、妙に頑固者である叔父の高田臣。人間臭い蘇我氏がそこにはある。
しかし、小説とはいえ、断定的に書きすぎなのではないか。特に豪族たちの出自が、新しかったり、バラバラなのが気になる。現代と違って、豪族は出自にうるさかったはずである。いくら実力があっても、それは致命的。継体天皇も仲間はずれにされた口なのではないか。
また、前代の武烈天皇に誅されたはずの平群氏が出てくるのも気になるし、こんなに派手に戦争状態にして良いのだろうか?
ところで、題名中の『北風』とは誰なのだろうか?筑紫君磐井が西風と書かれているので、継体天皇を指していると思われる。
しかし、作中にも出てくる堅塩姫(きたしひめ)が何故『かたしお:現在の大和高田市の古地名』姫と呼ばれないのかについての疑問にも思い当たるふしがある。『し』は『風』を意味する。『きたし』とは『北風』とも書ける。後世蘇我氏有力者の首が堅塩漬けにされたので、『かたしお』は忌み言葉となり、わざわざ言い換えるのだとの言う人もあるが・・・。風の森のある葛城は、風神の国でもあった。
堅塩姫は旧王朝の血を継いだ欽明天皇の大后となって蘇我氏の隆盛を決定づける。
北風とは誰なのか、生きておられる内に、是非作者に伺ってみたかった。
良かったです。
★★★★★
600ページを越える長編はとにかく読み応え抜群でした。
かなり長いです
★★★★☆
長かった。600ページを越える作品ですから。これで1冊ですもんね。通常なら2冊分以上です。
6世紀初頭、空白の大王位を狙う北方の雄、継体と大王には血統的になれないが、蘇我氏の繁栄をねらう蘇我稲目の知略を描いた作品です。実際に読んでみて、ちょっと周りくどいかなって思う部分もありましたが、面白い作品でした。