ざっと復習するには悪くない本
★★★★☆
教科書が面白くて歴史好きになった、という大人はほとんどいないだろう。学習指導要領とやらでがんじがらめの教科書には、歴史を面白くする上で大切な、物語性というものが欠けているからだ。多くの大人が歴史小説を通じて歴史好きになっているのは十分な理由がある。
しかし、歴史小説は一つの時代や人物に焦点を当てるもので、世界史の大きな流れをざっとつかむのには適していない。勉強する気さえあれば、十巻、二十巻におよぶ優れた一般向けの歴史書もいくつも出ているが、読破するにはそれなりの時間と忍耐がいる。だから、学校で歴史が嫌いになった人はもちろん、歴史の好きな人でも、世界史の大きな流れについての基礎知識という点では、意外と抜けている場合が多いのではないか。
その意味で漫画、しかも文庫版という手軽な形で世界史の大雑把な流れをつかむことができるこのシリーズは価値が高い。こんなに簡単に読めるようになってなお、世界史の「せ」の字も知らないのではもったいない。今勉強中の中高生はもちろん、復習したい大学生や大人も、漫画とバカにせずぜひ手にとって読むべきだろう。その気になれば一日で10巻全部通読できるし、何度か読めば内容は頭に入るだろう。
第1巻では、古代エジプト・オリエントとギリシア・ローマを扱っている。薄い漫画一冊でこれだけのテーマをカバーするには無理があり、とびとびでかなり薄っぺらい記述になってはいる。それでも、古代のオリエントでどのような国々の興亡があったか、アテネとスパルタの対比、ペルシア戦争とペロポネソス戦争、ポエニ戦争、カエサルの事蹟、キリスト教の誕生などの事項について、ざっと復習するだけでも600円の価値は十分あると思う。