砂金のような真実を見つける
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誤解を招きやすい題名。名付け人林真理子に言わしめれば「ありきたりの日常に埋没しないで、すうっと流れる日々の中から、砂金のような真実を見つける」ことが「意地の悪い」という意味だと言う。ほのぼのとしたエッセイではなく、インパクトのあるものを期待する。
「ちびくろ・さんぼ」が帰ってきた…井上富雄はこの古典的名作絵本の復刊に努力した。何らかの理由で絶版になった児童書を見直し、後世の子供たちに残す残す価値のあるものを復刊させることに意義を感じている。黒人の活動する姿を、数多く見るたびに感動こそすれ、差別的な感情を持つことはない。
この本を読んだことで、黒人を差別するようになるであろうか。今回の復刊に至るまで、紆余曲折があり、大変なエネルギーが必要だった。その蔭の力になった出版人の、生の声が披瀝されている。よく議論されないで「言葉狩り」されないよう願わざるを得ない。
本書には78編のエッセイが、今を時めく78人の文壇内外の有識者によって綴られている。そして、先日亡くなった吉村昭の「道づれ」という印象深い作品が掉尾を飾る。空襲で妻子を助けられなかった男とふと出会い、すぐ別れたという淡々とした小景ながら、惻々と迫るものがある。