新旧とりまぜてあるのがいい。
★★★★★
「あなたの行く朝」という超名曲が、ベスト盤により入っていたり無かったりするので、こちらの作品は買いだ。といっても、実はこの曲人により好き嫌いが分かれる。何故なら途中でポエトリーリーディング(語り部分)になるので、普通の日常性やPOPSを考えると“なんだか恥ずかしい”“歌いにくいなあと”思われる方も、多いかもしれない。だが、この曲にある加藤の真剣さや、詞の深さは、うたが人生に多大なギフトを残してくれる場合があるとすれば、まさにそれに当たる。何故なら40、50を過ぎると伴侶や恋人との「死別」という絶対さの前に、何か人生を賭けて大事な精神に出会いたいと思うものだ。この曲は何もそれに限定した話ではないが「別れ」というものを、彼女の物語なりに歌い、その根底に、大人の愛を置く。それは夫と独特の付き合い方をし、死別した彼女の歌ならではのリアルさと情感だ。手に入れられたら、よく詞の世界を堪能してもらいたい。
ところで、加藤登紀子の琉球歌というのは、実はなかなか高いものがあるのだが、今作ではベタな曲しかないのが残念。「花染め節」「アッチャーメ小」が収録されてる「加藤登紀子の世界」や他の琉球歌を収録している沖縄ソング系オムニバス作品をチェックされたし。
また「さくらんぼの実る頃」の日本語ヴァージョンがないのも残念。仏語版だとちょっともの悲しさが際立っているのだが、日本語の儚さで表現した作品は、加藤登紀子だけがもっている音の(歌声の)儚さと相まって、実に神が降りてきてるテイクなのだ。あっさりと短い曲だが、実にいい。こちらも是非。