「アフリカ産」で勝負できる時代の終焉
★★★☆☆
非英米圏出身の音楽アーティストの場合、英語圏の音楽にあわせるのか、それとも自分達の音を通すかという別れ道が重要な踏み絵になる。そもそも英語でマトモに歌える歌手がいなかった日本の場合、これだけ日本文化が注目を浴びていても坂本九の一発ヒット以外にどちらの路線でも成功者がいないことを思い返せば、非英語圏音楽アーティストが英語圏で成功することの難しさは推して知るべしであろう。
ギザイアの場合、高校時代にロンドンへ留学して以来の外国っ子なので、自然と英語で歌いながら正攻法で英米市場へ殴り込みをかけることになったのだと思う。だが、「黒人=hip hop」という市場の趨勢は、「ブルース+ロック=ブルー・ロック」という彼の必死の自己定義も黙殺してしまい、デビュー以来10年以上を経て今に到っている。実際、本盤で久々に聴いた音も、演奏のテンションは高いものの、ボーカルとメロディの弱さが災いして他の白人産業ロック勢に較べると中途半端なインパクトになっているように思う。この路線で非白人が成功するには、プリンスやレニー・クラヴィッツ並のアクと運が要るのだ。もちろん、そんなことは恐らく百も承知で勝負をかける彼はエライと思うが、やっぱ新機軸が何かいるんではなかろうか。アフリカの音でやってるギタリストの中には彼の他にもバカテク・ギタリストがゴロゴロしてるわけだし。
羽のように軽やかなファンク
★★★★★
ラジオで聴いたMy Kinda Girlがすごく良くて、速攻で購入です。
ギターが超パーカッシブ。粘っこい重量級で押すのではなく、しなやかにうねったり跳ねたりしながら疾走するファンク。
個人的にはミシェル・ンデゲオチャオ(蝶のように舞い蜂のように刺すことが出来るベーシストというかマルチプレイヤー)と近い資質を感じます。
パーカッシブなギターという点ではラウル・ミドンが好きな人も気に入るんじゃないかな。
身体が自然と揺れてしまうようなギターがベースにあって、そこに軽やかに、自由に歌が乗って絡むような曲が多く、土の匂いと都市のストリートの匂いを同時に感じられ、気持ちよい。
ジャンル的には、ファンクとブルーズがベースらしいけれど、そこにアシッド・ジャズ〜ニュー・クラシック・ソウルの流れや、ロック/フォークが混ざった感じ。フュージョンみたいだと感じる曲もありました。
パーカッシブなリズムという点では、ナイジェリア出身で、フェラ・クティトリビュートにも参加したと知って、なるほどと思う部分もあり(実のところ、若い内に渡英していたみたいですけれど)。
個人的には、中学生の頃聴いて以来気になっていた曲が、この人の「リズム・イズ・ラブ」だと今回判明して、それも感慨深かったです。
十数年前の事なのに記憶に残っていた位、印象的なギターだったのですが、そのギターが今作でもたっぷり味わえます。