データに基づいた、政策処方箋
★★★★☆
テレビのニュースショーに対する批判の書。テレビでは具体的な例が重視される。そのため、突出した出来事があたかも全体的な傾向であるかのように報道されることがある。個々の事例はウソではないが、国の政策判断の根拠にするべきであるかどうかは、吟味の必要がある。
たとえば、救急患者のたらい回しが都市でも起こったので、医師不足が叫ばれた。しかし、本当は人口あたりの医師は不足しておらず、開業医と勤務医のバランス(医師の偏在)や、大病院とかかりつけ医院の役割分担がうまくいっていないこと(フリーアクセス)が問題なのだ。したがって政策としては、医師の総数を増やすことではなく、税制優遇の見直しなどによって開業から勤務への医師のシフトをうながしたり、医療機関を階層化したりすることで本当に必要な人が高度医療を受けられるようにしたりすることが求められるはずである。(第二章医師不足は本当か)
データに基づかない議論は表層的感情的なものになってしまうという警告と、環境、医療、教育、郵政、政治・行政に関する政策処方箋。
興味深く読みました
★★★★★
環境・エネルギー、医療、教育、郵政改革、政治の5分野について現状分析とあるべき方向性について記述した本。
それぞれ1冊の本が書けそうな大きなテーマを40〜50ページ程度で書いているので、分析はやや一面的であり、「著者の主張する政策以外に選択肢はないのか」と感じる部分(たとえば温暖化防止のためには原子力発電比率を高めるべきという考え方)もある。
しかし、本書で示されている考え方は傾聴に値するものばかりと思う。著者の主張・論旨展開は明快であり、「なるほど。そういう考え方もあったか。」と感じた部分も多々あった。
なんとなくふわっとマスコミ情報に接して、その情報だけで分かった気になっていてはいけないと気付かせてくれる本。良書だと思います。
現状を手っ取り早く知る
★★★★☆
環境・エネルギー,医療,教育,郵政改革,政治・行政改革について,
イデオロギーや情緒的な議論をバッサリ切り捨て,現状と解決策をスッキリ明快に提示する。
たとえば教育に関して,書類作成の多さが教員の多忙の一因であることがよく言われてるが,
それは「学習指導要領が,パフォーマンス管理ではなく,プロセス管理」となっており,
教育の目標は決められているものの,その成果が問われないことが原因だとしている。
また,環境・エネルギー問題に関して,クールビズやこまめな節電は問題の解決には効果が薄く,
原発の推進が大きな効果があることを示している。
ただ,原発に関しては放射性廃棄物処理のエネルギーやコストが大きいことをよく耳にするが,
これらに関しては触れられておらず,やや疑問が残った。
いずれのテーマも巷で大きく取り上げられていることであるが,
細かいことになると実は知らないこともある。
解決策については十分納得できないものもあるが,
現状を手っ取り早く知るためには有用である。
「デタラメ」と書くなら,もっときちんとした議論が必要
★★☆☆☆
タイトルに「デタラメ」というつよいことばをつかうならば,これまでの議論のどこがデタラメなのか,きちんと論じるべきだろう.著者がこれまでのおおくのジャーナリストなどと意見をことにしていることはこの本を読めばわかる.しかし,従来の議論はデタラメで著者の意見はそうでないと主張するなら,どこがデタラメだったのか,なぜ著者の議論はデタラメでないといえるのかを,もっときちんと論じるべきだろう.たとえば,著者は「後期高齢者医療制度そのものは悪い制度ではない」と書いているが,その理由はまったく書かれていない.これでは,おそまつというほかはない.
温暖化抑制には原子力発電しかない?
★★★★★
一キロワット発電するには、石油火力で742グラム、石炭火力で975グラムの二酸化炭素が発生する。
それに対し、原子力ならわずか11グラムにすぎない。
だから京都議定書の目標を日本が達成するには、原発の発電割合を50%に上げるだけで済むという事実と、二酸化炭素の発生を抑制するために冷房の温度を28度に設定しても、今のままではその効果はほとんどないという事実をマスコミは全く報道しようとしない。
民主党やメディアが伝える政策が、いかにデタラメかということがよくわかる良書である。