収録された写真がどれもこれも本当に美しくて素晴らしいです。モノクロですが写真の角度や濃淡が大変に綺麗で、被写体が「天使」であることもあいまってまさに天上の美の饗宴。
美文で知られる著者だけに天使への思いの丈を綴った文章も非常に美しく豊かです。
ただこれらの美に手放しの絶賛をしないのもまたフェルナンデス氏。これほどの美を希求せざるを得なかった人間の側の追い詰められ方や悲しさも冷静なまなざしで感受して、幾許かの苦味をこめて美の周囲を文章で縁取ります。
永遠とは何か、美とは何か……そんな感慨を読者に誘う美しい書物です。
再販を願ってやみません。

　ファンの多い、ドミニク・フェルナンデスのバロック紀行です。ローマ、南ドイツ、
ウィーン、プラハとやや変わった選択ですが、単なる感想文ではなく、著者の
審美眼と知識が惜しげもなく披露されて、とても楽しい読み物になっています。
　プラハにはかなり思い入れが感じられますが、マイナーな感じは否めません。