戦前の土佐の侠客「鬼政」こと鬼龍院政五郎(仲代達矢)の壮絶な半生を、養女・松恵(夏目雅子)の視点からつづっていく文芸任侠映画。実娘・花子(高杉かほり)を溺愛しながらも、その一方で血のつながっていない松恵と心通わせる鬼政の不可思議な絆はあまりにもせつなく、数々のダイナミックな殺陣シーンにも勝る情念の迫力を醸し出す。
自身、背中に入れ墨をしょった侠客でもあり、銃砲所持で逮捕の憂き目に遭っていた映画監督・五社英雄の起死回生の作品。また、「なめたらいかんぜよ!」の名台詞でも知られる薄幸の名女優・夏目雅子の代表作でもあり、さらには撮影、美術など、映画ならではのコクと気品に満ち満ちた傑作である。
原作は宮尾登美子で、以後『陽暉楼』『櫂』などなど、土佐を舞台にした彼女の小説が続々映画化されることになった。(的田也寸志)
ドラマ版よりやっぱ百倍ええわ
★★★★★
観月ありさのドラマ版を見て、物足りなさを感じたので、久々に引っ張り出してきて見たのだが、やっぱりこっちの方が百倍いい
まぁテレビ版は予算や放送時の倫理的な縛りもあると思うが、どうも極道な雰囲気が出ておらず、きれいにまとめられ過ぎていた感じがした
高橋英樹ではどうしても優しい雰囲気が勝ってしまって、侠客を気取っているが切れやすく、実際はその器でない鬼政と呼ばれる人物にはちょっと難しい気がした
やはりこの仲代達也の極道さはすばらしい、ハマリ役、これに勝るのはなかなか大変なのでは?というか、今こういう極道をできる人はいるのか?
夏目雅子もブルーリボン賞をとっただけあって、いい演技をしている
特にラストのカチコミ前の鬼政とのやりとりは仲代達也の演技と相俟って涙なくしては見れない(ドラマでは手下が全員見送るという薄っぺらな感じだった)
有名になった「なめたらいかんぜよ!」の台詞もやっぱり夏目雅子の方が様になってる
ドラマより子供時代が長くとってあり、松江の子供時代を演じる仙道敦子もなかなかよかった
つるとの一歩もひかない殴り合いシーンなんかもよかった
岩下志麻の鬼政嫁も当然ながらすばらしいし
ま、俳優陣がすべてハマリ役と言っていいほどいい
花子役には批判もあるようだが
山出し娘と言われる「つる」から生まれた子供だけにあんな感じが正しいと思う
地味で器量も素行もよくないけど実の娘だからカワイイ
そういうことなんじゃないでしょうか
ドラマの宮本真希はちょっときれいすぎる
さらに、映画版はこういう雰囲気が大得意の五社英雄だけあってカメラワークもいいし、セットもこだわって作ってあり、雰囲気バツグン
これはちょっとやそっとじゃ超えられませんわ
まぁそんなわけで、ドラマ版はきれいなファンタジーを見たい人向け、この映画版はリアルなホンモノを見たい人向けな感じがしました
当然、ホンモノにしかホンモノの感動はありません
お話より演者が熱く濃い
★★★★☆
故・夏目雅子さんに注目を据えれば、代表作、開眼作、主演と言って間違いないし、若くして急逝された名花でもありそう言いたくなる気持ちもわかりますが、全体としてはやはり“仲代達矢さんの映画”以外の何ものでもないですね。
無学で無骨な、情熱の侠客鬼龍院政五郎、しかし無名塾塾頭たる仲代さんの熱演で、どこか“プロの役者魂が、アタマで考え、こしらえを尽くした無学”になっているのが面白い。
「こういう役に小手先ではイカン、まず、おのれを真っ白にして、役を読み込み読み込み、おのれの中に役が入ってくるのを待って、待って、ためて、ためて、よーーーしキターーーー!!」とバーン放射したところを五社監督よっしゃー撮った!!みたいな、一期一会の神がかり的な迫力がある。
そこへ行くと制作当時24歳の夏目さんは、ピュアで徒手空拳で、方法論も何もなく感性でぶつかっているのがわかりますね。役設定以上に、演技キャリアも親子ほど違うお二人が、心を裸にして向き合う“討ち入り”直前の2ショットは胸を打ちます。
夏目さん扮する松恵に感情移入して観てしまうように作られているにもかかわらず、ラストがえらく突きっ放しなので★満点にはできませんが、2時間半弱の長尺にふさわしい見ごたえはあります。
有名だけど失敗作
★★☆☆☆
有名監督が撮っているし、有名俳優がそろい踏みしているし、おまけに夏目雅子が脱いでるしで大変有名な作品。
が、あらためて見るとこれは決して傑作ではなく、むしろ失敗作に近いと思う。
原作・題名では花子が主人公なのに映画では松恵が主人公。
これにまず違和感だが、さらに一番活躍するのは鬼政なので、誰が中心なのかさえよく分からない。
ついでに、個々の場面で説明不足、登場人物の理不尽な言動が目立つ。
長い映画だが、それでも長い時間を扱っている原作を映像化するには足りなかった印象だ。
俳優陣は今となっては望めない豪華さだが、それ以外の見所は乏しい。
夏目雅子も美しいが、置物のような印象に乏しい美しさだ。
啖呵を切っているシーンも大した迫力はなかった。
何でこの映画が妙に高く評価されるのか理解できない。
夏目雅子が見たかった
★★★★☆
夏目雅子が出ているという情報と五社英雄のやくざテイスト映画という認識位しかなかったが、みてみるとなかなか面白く見ることができた。夏目雅子さんについては死んでしまってからの情報しかないのだが、ご多聞にもれずこの映画の中の彼女はとても素敵で、他の作品も見てみたくなった。
また1982年の作品だということを調べるためにいくつかのレビューサイトをみたところ、花子役の人の面構えに関していくつか否定的なコメントが目立ったが、僕は作品の中であの人以外ないのではないというくらいはまっていてすごいキャスティングだと思った。花子の悲しさががうまく表現されているのはキャスティングによるところが多い気がする。
凄い・・
★★★★★
子供の頃にTVで見たときはストーリーを理解できなかったけど
大人になってから見直すとその完成度の高さにただただ絶句します。
なんといっても仲代達矢の演技が凄くて・・
ストーリーの展開とともに時代背景の移り変わりや、
それによって変化する鬼政たちの状況なんかの描写も細かく表現もされています。
たとえば、晩年財政難に陥った一家を表現するのに割れた窓ガラスをテープで貼って
修理してあるような細かい描写があったり、とか。
同時に鬼政や組員たちも歳を重ね、それに応じた演技の変化も見どころです。
そして最後には覚悟を決め自分の死について語る鬼政・・
どんな世界に生きていても人間の根底にあるものには変わりないなぁと思ってしまいました。