ほれぼれする美男ぶり
★★★★★
ご存知ラクロの「危険な関係」のコミカライズ。
以前宝塚で「仮面のロマネスク」として上演された際にさいとう先生のビジュアルを見た記憶もあるのですが、記憶違いかしら?
とにかく一にも二にもヴァルモンのビジュアルと滴る色気がないと成立しないこのお話。
さいとう先生のヴァルモンは、さすが、ため息が出るばかりの美丈夫ぶりで、もうページをめくるのが大変でした。
漫画界広しといえど長髪の古典的西洋貴族を描かせたら右に出る方はそうはいないんじゃないかしら。
原作と照らし合わせているわけではないですが、手紙の引用の量をみると、かなり忠実に漫画化されていると思います。
それでいて、テンポは悪くない。
ヴァルモンとメルトゥイユの間にある、どんな睦言も刃を交えているようなひんやりした空気、
ヴァルモンとトゥールベルが接するときのほのかに白く輝く温かさ、
ヴァルモンがセシルを攻略する放蕩者本来の誘惑の色合い、
モノトーンの紙面から立ち上る色彩や情感がすばらしいです。
特にメルトゥイユ関連の独白の冷たい、陶器のような質感は身が引き締まる思い。
ラストもおそらく原作どおりなのでしょうが、おおいなる落日を楽しみにしております。