実力派歌手と堅実な演出
★★★★★
善人も悪人もまっとうなこの歌劇を実力派の歌手が力のある歌唱で歌いきっています。オーケストラの伴奏もピッタリ付いています。演出は破たんのないきわめて正統的なもの。
解説書では永竹由幸のオペラ成立の事情、史実と題材を同じくするオペラとの比較が絵や写真入りで詳しく、井形ちづるの「第9交響曲」との比較や4種類もある序曲の分析も面白く、読み応えのあるものです。
ただ、私はこの生真面目で辛気臭いオペラがあまり好きではありません。オーケストラの伴奏も、ベートーヴェンが歌手任せにできなかった結果のように徹頭徹尾雄弁なところが、なんだか気の毒に感じてしまうのです。