「一噌幸弘」を知らない人に説明するのは難しい。長く一噌幸弘を聴いてきた私でも難しい。基本は「能楽の笛の人」なのだが、能楽以外の活動の方が有名なぐらいだ。あえてジャンルを特定すると「ジャズ」ということになるが、スタンダードナンバーのような古典ではなく、バリバリのモダンジャズである。しかし、「ジャズ」と言い切ることもできない音楽であるのも確かだ。「ハイパーモダンな能音楽」というべきだろうか。興味を持たれた方はCDなりライブを聴くことをおすすめする。
さて、「リーヤリ」はバイオリン・太田恵資、コントラバス・吉野弘志とのトリオ構成。一噌幸弘はおなじみの能管、篠笛、田楽笛の他につの笛、リコーダーも演奏する(一噌氏は世界中の笛のコレクターでもある)。初めての人は面食らうだろう速弾き(吹き)も随所に現れるが、全体にメロディアスで聴きやすい曲。一噌幸弘にしてはおとなしい印象かもしれないが、とっつきやすいという点では推薦できるCDである。なお、5曲目「つの笛即興曲」では同時に笛2本を吹いている部分があるが、これは多重録音ではなく、本当に2本を同時に吹いている。信じられない方はライブで実際にご覧になってほしい。
活発なライブ活動の割にCDをほとんど出さないのが一噌幸弘である。気に入ったらなら他のCDも廃盤になる前に手に入れておくべきである。