大人の作品
★★★★★
個人的には、オノナツメ作品のなかでも最も落ち着いているように思えます。
ゆえに、1度読んだだけで面白さがわからない場合もあります。
私の場合は実は買って、4回繰り返し読み、好きになった作品でもあり。
わかりやすさや強さを求める方には不向きな物かと思います。
ただ、人間の機微が非常にことこまやかに描かれています。
江戸時代、当時であれば黙殺されかねないような、優しい侍が主人公です。
どの時代でも、他人の気持ちに共振できる感受性の鋭い人物は、えてして誤解を受けやすく、また、
弱者に見えやすいものなんだな、と感じさせます。
それゆえ、仕事に疲れた方、人とのかかわり合いが嫌になった方には、おすすめの本かと思います。
和服好きにはたまらない
★★★★★
最初は「ありがちな話だな。」と思った。なんだか京極夏彦の巷説シリーズにもかぶるし。
しかし読み進めていくうちにキャラクター一人ひとりの表情の変化が気になってくる。
次巻への期待もこめて、星四つ。
これから、政がどうでてくるか期待
★★★★★
五葉の中心、つかみ所のなかったイチに、遊び心でなのか仲間に入れられた、政。1巻では、刀の腕はいいがそれを生かせず、お人よしなだけな侍。イチが仲間に入れたのは、本当に気まぐれかと思うほど。それが、この巻では、寡黙な御隠居や梅に、屈託なく質問をし、饒舌にしゃべらせてしまう…それは才能なのか?ご隠居には政の中に、五葉に向かない、抜けるなら早く…しかし、不思議な男であると感じてるように思った。
2巻の終わりのほうでイチの身の出所を匂わせて終わるが、何巻かわからないけど、いつかそのうち、政が変わっていくのでは…と感じさせる。これはあくまで推測であるが。
大江戸ノワールの世界
★★★★★
相変わらず軟弱で人の好い浪人・政。
原因不明の病にかかり、ご隠居宅で療養する事に。
そこで梅の過去を知るのだが…。
今回は「五葉」の梅造のお話。
カタギとは言えないけど、愛娘と地道に商売をして暮らす梅。
しかし、過去に属していた闇の一味とのシガラミが元でひと騒動起きてしまいます。
闇の世界にも厳しい掟があり、一度足を踏み入れたら容易にカタギには戻れない。
何となく池波正太郎の世界を彷彿とさせるクールでシビアな内容でした。
今回、政は梅のために頑張りました。すぐ元に戻ったけどね(笑)
ご隠居は素敵なオジイサマ。一筋縄ではいかない渋い御方です。(そして、オノナツメさんお得意の初老の男)
一方、弥一は回を追う毎に凄味が増してる様に見えます。
断片的だけど彼の素性も見えてきました。他の仲間の素性とともに徐々に解明されていくのでしょうね。
今回も劇的な展開はありませんが、登場人物の過去や心情を掘り下げて描いてるので読み応えはあります。
粋な人達を変にカッコ良く描かずシンプルに描いているところが魅力です。
徐々に…。
★★★☆☆
1巻は正直「ここ好き!」って場面がありませんでした。主人公、政が煮えきらない性格でちょっと読んでてモヤモヤしました。ほぼ主要メンバーの顔合わせで終わりって感じでした。
でも2巻は違いました。五葉の一人、梅にスポットが当たっていて話に奥行きが出てきた気がします。政の天然で野暮ったい性格に触れ次第に饒舌に語る梅。政は気は弱いですが、彼の素直な心が人を変えるんだと思います。武士なのに優しい男なんです。情が篤い。
今後もっと五葉の仲間と歩み寄ってイチの心も動かして欲しいです。