珍しい構成の音楽史の本でした
★★★★☆
音楽史は音楽の理解を助ける学問ですが、ややもすれば学問としての追及が一般の音楽愛好家の視点とずれてよく理解できない書籍があるのですが、本書は専門的な部分とできるだけ分かり易い記述を心がけている部分が混在していると言う編集でした。二人の分担執筆のせいもありましょうが、それぞれの個性の違いが統一感を損なう感じにとれたのですが・・・。
第1部のルネサンス、バロック、古典派、ロマン派に対する記述は、音楽に長く関わっている人には興味をひくと思いますが、音楽史の初心者にとって、個別細分化された問題意識はなかなか付いていくのが大変でもう少し平易な内容のほうが分かりやすかったですね。
第2部の第2章のモーツァルト「魔笛」への視点は面白いです。大衆性と芸術性の至高の一致まで到達した、という指摘はその通りですね。
第2部の第4章の「絵画と音楽の印象派‐光と色彩の饗宴‐」は面白い試みですが、肝心の印象派の絵画がなければ理解が難しいでしょう。意味することは理解できましたが。
第4部の第3楽章の「調性という遺伝子」の項は興味深く読みました。特に調性音楽の可能性と追求としてのポピュラー音楽として、パッフェルベルのカノンのコード進行を取り上げ、赤い鳥「翼をください」、山下達郎「クリスマス・イヴ」、小林明子「恋におちて」、ザード「負けないで」、岡本真夜「TOMORROW」に同様のコードパターンがあると指摘しています。
全体を通しての統一感よりも、個々の章における主題の展開がメインとなっているからこそ、17の視座というタイトルになっているのですね。そのような理解を元に再度全体を眺めてみるとそのユニークな試みは一定の成功を収めていると言えるでしょう。
ちょっと欲張りすぎか...
★★★★☆
この後に出た「名曲が語る音楽史」および「名曲に何を聴くか―音楽理解のための分析的アプローチ」の方が,本としては完成度が高く,読んでいて面白いように感じます.アナリーゼを主体として議論を進める方法論はほぼ同じですが,この本では社会や思想との関連から議論の幅が広く,多数の作品を縦断的に取り上げる展開になるため,紙面の都合か譜例も少なく,読んだだけでは理解しにくいところが多々あります.とは言え,さまざまな時代の多様な作品に触れながら立体的に音楽史を解き,ポピュラー音楽にも触れている点で,大変ユニークで興味深い本です.
これも音楽史なんですね。
★★★★★
変わった視点からの音楽史、というより音楽学かもしれません、おもしろい切り口から音楽を見ることができます。