若干完璧ではないが、有用な武将ファイル
★★★★☆
三国志に登場する数多の武将の中から、印象深い69人をピックアップし、各人物2〜4ページの簡潔な紹介がなされています。特に、物語では描写が浅くなりがちな魏・呉の武将について、あまり知られていないエピソードや生い立ち、最期が取り上げられているのは、嬉しい限り。仙田聡氏のイラストも独特の迫力があり、各人物のイメージを掴む手助けになってくれます。演義と正史での各人物の描かれ方の違いについても言及されており、玄人にもお奨めです。
ただし、紹介される武将が、魏・呉・蜀の三国に偏っている点は留意する必要あり。三国以外で取り上げられるのは、董卓、呂布、袁紹といった君主クラスに留まり、残念ながらその配下までは紹介がなされていません。董卓の「悪」知恵袋の李儒、袁紹が誇る二猛将の顔艮と文醜、曹操も惜しむ才がありながら呂布と運命を共にした陳宮、などの魅力的な武将・軍師が蚊帳の外なのは寂しいところです。
そういった面でやや完璧ではないながらも、文庫としては十分質の高い名将ファイルです。