これは可笑しい
★★★★☆
すごく面白いことを思いついたりやったりできる人の大部分はおそらく「たまらん人々」である。解説にもあるとおり、中島らも自身もたまらん人のようだ。こういう面白過ぎる人たちというのは、ナイスガイとは言い難いことが多い。私生活はもちろんめちゃくちゃで、当然体はぼろぼろで長生きできない。生まれつき体が丈夫な場合には、今度は精神のほうが持たなかったり、突然事故で死んだりする。そういった意味で賞味期限はあまり長くない。この本は中島らもの冗談作者としての賞味期限内に書かれた傑作である。
馬鹿馬鹿しい笑い
★★★★☆
≪今回の文庫化で,「たまらん人々」はいっそうハンディになった。だからといって,電車の中で読むことはおすすめしかねる。あなたはきっと周囲の状況も忘れてバカ笑いをし,まわりの女学生や若者から,
「たまらん奴やな」
と思われるにちがいないからだ。≫(213頁)
筆者自身が上記のように「あとがき」で書くとおり,電車の中で油断して読んでいると,思わず吹き出してしまうので注意。
≪別に年がいってなくてもトロい人というのはたくさんいる。大衆食堂のオバちゃんなんかにも多い。
「焼きソバ」
「はい,焼きソバね。ライスはよろしいですか?」
「いや,いいです」
「はい,少々お待ちください」
なんてやりとりがあって,しばらくするとニコニコしながら寄ってきて,
●「ハイ,ヤキメシ大盛り お待たせェ!」
なんて言ったりするのである。≫(41〜42頁)
上記の●のセリフが漫画になっているのだが,これを読んだときには本当に吹き出してしまった。
文字での引用だけでは伝わりにくいので,是非,現物を手にとってもらいたい。
中島らもの初期エッセイ
★★★★☆
この本は、私が初めて買った中島らも作品である。
内容は、らも氏のサラリーマン時代の同僚や上司との間で巻き起こった事件、あるいは当時からの親友であったキッチュ(松尾貴司)との間での出来事などがテーマとなっている。
らも氏が「今夜すべてのバーで」にて売れっ子作家になる前の作品であり、数ある著作の中ではマニアックなアイテムに属すると思われる。
らも氏自らによる挿絵もなかなか良い味を出している。
悪人博覧会
★★★★☆
あいにく、らもさんの小説読んだことないのだが、こうした深みのある人生歩んで来られた偉人賢人の作品は、もはや世俗を超越しているため、なかなか権威付けされない。作家というより、ろくでなしに慈愛を傾けた物好きで、神仏のような見下ろした態度は、既に市井の人とはいえない。もうこの世にいないと見える。インスタントな悟りを得た聖人。社会の底辺をうろつけば塩が浸む。本書も最低人間のオンパレードで、胸が悪くなるようなことばかりだ。しかし、どうして悟った人というのは、無口にならなければいけないのだろう。数年前に朝生に出たが、殆どしゃべらなかった。バカをやっているうちが、人生花だったのかも。