死を背景にしたどこにでもいる女の子
★★★★★
自分の弟子を覚醒させる為にすばるを利用する天才ワーニャと、すばると、死を間近にひかえたワーニャの意図を知りつつ送り出した恩師五十鈴のみっつの線が重なる私が一番好きな巻です。
ワーニャは40度の熱のある死に直面したすばるを無理やり舞台に立たせ(次の巻)、五十鈴はローザンヌの舞台の始まる前に死んでしまいます。
生きるとはこういうことでしょう。
五十鈴は、すばるをローザンヌに送り出すとき、「誰にも受け入れられず自分の居場所はなかった」とすばるから言われ、すばるを抱きしめながら、泣いてしまいます。
それでも、すばるが強く巣立って紀のを感じもう大丈夫と喜びます。
私は10巻の中では、最も好きな巻です。
趣味、プロ、天才バレリーナになるのが目的ではない、自分に与えられたこと(和馬の病気の慰め)を必死にやってそれが好きになり、自分自身になり、キャバレーでかっての怪物天才バレリーナ五十鈴の指導の下、ヌードを見に来る客の前で踊るバレエを踊るすばるは、どこにでもいる会社勤めの女の子と同じです。事務でもバレーでも同じでしょう。生きると言う事は悲しく美しく、何者をも超えた真実なのでしょう。そういう漫画です。