このみずみずしい詩集
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この詩集の文学史的意義を言う必要はないだろう。
著者島崎春樹(藤村)の処女詩集。春陽堂から明治30年8月発行された初版本。
自らはしがきに次のようにみずみずしく、「若菜」のいわれを五行、赤字で記す。
明治二十九年の秋より三十年の春へかけてこゝろみし根
無草の色も香もなきをとりあつめて若菜集とはいふなり、
このふみの世にいづべき日は青葉のかげ深きころになり
ぬとも、そは自然のうへにこそあれ、吾歌ほまだ萌出し
まゝの若菜なるをや。
かの有名な「初恋」を初め「六人の処女」「草枕」「秋風の歌」など仙台時代の詩作51編が収められている。いずれも七五調の流麗なリズムでみずみずしい叙情が詠いこまれている。永遠の青春文学と言えよう。