物語の焦点が定まらない
★★★☆☆
著者の異色の作品で将棋の舞台が登場します。
登場人物像から物語は随分前の話ですが、将棋ファンの方たちにとっては懐かしい感じを抱きながら楽しく読めるでしょう。
著者はミステリー作家であるため、どうしてもそういうシチュエーションが織り交ぜてありますが、本作品にとっては殺人事件などは邪魔な扱いで、寧ろ将棋そのもののミステリー性を描いて欲しかったと思います。
また、ところどころ実名で棋士が登場したりしていますが、何だかちぐはぐな感じを受けてしまい、それならば始めから実名を使った形で描いて欲しかったと思います。
最後に残念だったのは、天才素人棋士・江崎秀夫のその後のことが書かれてないので、何処か不満を感じてしまいました。
徹底的に将棋
★★★★☆
物語は、将棋で始まり、将棋で展開し、将棋で幕を閉じる。
大道将棋から、プロの将棋界、無名の凄腕の将棋指しの登場、さらに、将棋がらみの事件。
将棋に関するウンチクや、プロの将棋界の話題、さらには、闇の?将棋界の話題まで、将棋一色だ。
物語には、いくつもの将棋勝負の場面が盛り込まれている。
そういう点で、勝負の行方もからんで、ハラハラドキドキの展開だ。
本作品は、1986年に書き下されたらしい。
そのため、話題そのものや、人々の価値観に、少し古さを感じる。
しかし、時代を感じる厚い人情の機微も盛り込まれ、かえって価値を感じる。
それにしても、無名の将棋指しの江崎秀夫は、本当に強い。
将棋好きにとっては、大変楽しいが、そうでなくても、それなりに楽しい。
むしろ、ここまで将棋に徹した作品である事に、意義がある。
将棋ファンにとって必読の推理小説
★★★★★
内田康夫の書いた本書は将棋ファンにとって名著の誉れ高い小説です。最近、幻冬舎文庫から発売され、また多くの方の目にふれることはこの本の愛読者として嬉しい限りです。
升田幸三・大山康晴といった将棋界において一時代を築いた巨星ともいうべき棋士をモデルにしており、そのあたりからして本書のユニークさは伺えます。個性的な登場人物に支えられてストーリーはどんどんテンポ進んでいきますのであっという間に読んでしまいますね。物語の中にぐいぐい惹き込まれる文章力の巧みさが感じられます。
第7章のラストにまだ中学生だった羽生少年(羽生善治)が実名で登場するあたりも興味深い描写の箇所です。天才少年のその後の活躍を予言したかの小説でもあります。
本書が書かれてから20年以上経ちました。升田・大山両氏とも今はおられませんし、盤上の解説者として途中に登場する芹沢博文氏も亡くなりました。本当に個性豊かな棋士が減って残念ですが・・・・。
フィクションではありますが、将棋の奥深さと面白さが随所にうかがえます。
勿論、将棋をよくご存知の方は勿論、知らない方でも普通の推理小説として楽しめますし、難しい理屈抜きで楽しめるエンターテイメント性に大変優れた作品だと思います。
世代を超えた名作として、その魅力は色褪せていませんでした。
将棋を知らなくても楽しめます
★★★★☆
この作品は内田先生のいつもの作品とはちょっと違います。ミステリーではあるけれど、事件の謎解きよりも、将棋の世界に重きを置いている感じ。私は全く将棋はわかりませんが、将棋を知っている人なら、この人物はあの人をモデルにしてるんだな、っていう読み方もできるし、棋譜を頭に思い浮かべることもできるのでしょう。
でも、将棋を知らなくても楽しめる作品であることは間違いありません。浅見光彦も信濃のコロンボも出てきませんが、こういう異色作を楽しんでみるのもいいかもしれませんね。
将棋の世界を知らなくても楽しめる作品ですよ
★★★★★
本書は将棋ファンにとって名著の誉れ高い小説です。
升田幸三・大山康晴といった一時代を築いた巨星ともいうべき棋士をモデルにしているあたりからして、本書のユニークさは伺えます。個性的な登場人物に支えられてストーリーはどんどんテンポ進んでいきますのであっという間に読んでしまいますね。
第7章のラストにまだ中学生だった羽生少年が実名で登場するあたりも興味深い描写です。
本書が書かれてから20年近く経ちました。升田・大山両氏とも今は亡く、盤上の解説者として途中に登場する芹沢博文も亡くなりました。本当に個性豊かな棋士が減って残念ですが・・・・。
フィクションではありますが、将棋の奥深さと面白さが随所にうかがえます。
勿論、将棋をよくご存知でない人も、普通の推理小説として楽しめますし、難しい理屈抜きで楽しめるエンターテイメント性に大変優れた作品だと思います。
久しぶりに再読しましたが、その魅力は色褪せていませんでした。