ラストに入っているさよならあめりかさよならにっぽんの詩は現場で松本隆が思いついた言葉でその場で絶賛を受けたらしい。最後にふさわしい曲が、アルバムの最後に入りはっぴいえんどはすべてをきれいに終える。
どの曲をとってみても、出来はいい。ただ張りがないというか、秋(飽き)がきたのである。僕はこの一連の「はっぴいえんど」レヴューを季節に例えてきた。前進バンド「エイプリル・フール」の冬の時代から始まり、「はっぴいえんど」が春、「風街ろまん」は夏。そして「HAPPY END」は秋なのである。
とは言え、やはり名盤なのである。
日本語をロックにしたバンドとしてこだわりのデビューから、続々と日本語のロックを唄うバンドが出現する中、日本語にこだわった曲作りから、音、リズムを重視し、日本語の「言葉」と「音」、ロックの真髄である「リズム」という三拍子を重視した、ロックバンド本来の「はっぴいえんど」として、完成度の高さを追求したのがよく分るアルバムです。
「風来坊」のリズミカルな音運びと、ギターのコード進行の心地良さは、格別です。「明日あたりはきっと春」の完成度の高さ。「無風状態」の力の抜けた洗練されたメロディ。「相合傘」は細野の特徴を前面に出した軽さが売り。そして「田舎道は正に絶品。泣きたくなるような「外はいい天気」の優しい音、そしてはっぴいえんどの最後にふさわしい「さよならアメリカ、さよならニッポン」でしめくくられています。この曲から感じた事は、
「はっぴいのロックは、アメリカのロックでも、ニッポンのロックでもない、はっぴいえんどのロックだったのだ・・」ということ。
岡林信康のバックバンドだった「はっぴいえんど」は3枚のアルバムを残し解散。
その後の4人は、それぞれココナツバンク、ムーンライダーズ、キャラメルママに分れ、今日の山下達郎、大貫妙子、松任谷由美、伊藤銀次、吉田美奈子、などそうそうたるアーティストを育て、日本のポップス界には、なくてはならない存在となるが、彼らの原点は、やはり「はっぴいえんど」という「登場するのが早すぎた」と言われ続けた日本初のロックバンドにあったのではないだろうか。
今、彼らが解散した頃に生まれた者達が活躍し、次々新しいバンドが出現しているが、あの頃、はっぴいえんどは、確かに生きていた。日本のロックは正に息づき始めていたのだ。
このアルバムだけでなく、彼らの残した3枚のアルバムを是非、聞き比べて欲しいと切に思う。