ホリンガーは、可視的なスティグマへとアイデンティティを帰着させられるマイノリティたちの存在可能性を、ブルデューの「ハビトゥス」にも似た交渉の力学の観点から、巧みに改変する。その矛先は、マイノリティの外部のみならず、マイノリティをマイノリティへと縛りつけようとする内的な呪縛へも向けられ、時に集団の闘争史へと単純に還元されがちな文化闘争を、個人の行為主体性へと向かわせる。そこでは、もはや、国勢調査が作り出す統計学的カテゴリーは、完全には機能せず、その背後に脱国家的な力学が作動する。多分にユートピア的な視点もあるが、ともすれば尻切れに終わりがちなこの手の本にあって、例外的に最後まで力のある本である。