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物語上野動物園の歴史 (中公新書)

価格: ¥924
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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上野動物園の歴史と今後 ★★★★☆
書名どおりの「上野動物園史」。
上野動物園の変遷、歴史、飼育動物のうつり変わりや、現在、これからの動物園のありかたを問う。
綿密な資料をもとにしっかり書き込んであり、動物園事情をとおして戦前・戦後のちょっとした日本史もおさらいできるような内容。
写真もそれなりに豊富で、資料的価値もある。
「上野動物園初の外来産飼育動物は?」などの豆知識も得られる。
新書でこの内容はお得。
日本における「これからの動物園のあり方」をリードすることに期待を込めて ★★★☆☆
前半5章は上野動物園の百年史。後半2章は、野生動物減少など、様々な社会環境変化の中でそれまでの「娯楽施設としての動物園」からの脱却を求められるようになった現在の上野動物園の実践と挑戦とが語られている。

動物園関係者でもなく、上野にも特別な思い入れのない私には、正直、前半はさほど面白くはなかったが、後半、動物園に対して「域外保全」はもちろん、「域内保全」への貢献までが求められるようになった背景を理解するためには、前半の娯楽施設としての長い歴史との比較が有効だ。つまり動物園の役割変化とは、人間社会と野生動物との関係の変化に他ならないからである。

著者が書くように、上野動物園がこれからも真の「国民的動物園」として存続しようとするのであれば、今後の上野動物園が背負うべき使命の一つは、他でもない、動物園自身が自覚したこの社会的役割の変化を、今度は動物園から社会全体へと、積極的に発信・啓蒙していくことだろう。北海道の旭山動物園は“行動展示”で大人気だが、正直、その本来の導入意図(=単なる娯楽を超えた、飼育動物の野生性へのリスペクト)が、どれだけ理解されているかは疑わしい。むしろ多くのマスコミ報道を通じて、旭山動物園の“行動展示”は既に単に、「動物園の新しいアトラクションの一つ」として、消費されてしまおうとしているのではないか。

この現状を打ち破って「動物園=娯楽以上の場所」であることを高らかに示すべきは、やはり日本においては上野動物園以外にはない。著者はあとがきで、
>私は動物オタクであり、動物園オタクである。
と書き、さらに、
>還暦を過ぎ、本性を隠すのも億劫になり、堂々と「我輩は動物コレクターである」と宣言したくなった。
と告白しているが(笑)、それだからこそいっそう、これからも引き続き、動物園の新しい役割の発信に力を入れていただきたいと思う。

なお、21世紀にあるべき動物園の姿をより深く考えたい向きには、文春文庫『動物園にできること』をお奨めする。本書と併せて読むと良いだろう。
動物園の過去、現在、未来と、施設や思想についての歴史 ★★★★★
上野動物園について、逐年的資料とトピックスとを取り混ぜて紹介している。
トピックスは面白いし、逐年的資料は貴重な記録である。
動物に対する考え方の変遷がよくわかり、とくに昨今の種の保存、繁殖計画など新しい考え方には目を開かされる思いである。
上野動物園を始め、それと一体関係にある多摩動物園、葛西水族館なども、今一度訪ねてみたくなる。
飼育動物は変わっても、動物愛は変わらず ★★★★☆
今まで世界史メーンだった同新書の「物語〜歴史」シリーズでかなり異色な本とも言える。日本のしかも近現代にスポットを当てているのと、他書が研究者であるのが、本書は上野動物園の現園長という点だ。エピソードや飼育方式の変遷など、当事者でなければ知ることが難しい話が多く、書くべき人によって書かれた感がある。余り知られていない宮内省機関だった時代と、戦後復興における飼育技術の急速な向上について大きくページが割かれる一方、多くの人が知る、戦中の猛獣殺処分やパンダフィーバーは5、6ページで終わる。多くの人が知るから敢えて本書で…ということか。前半では、国内で捕まえたサンショウウオやヒグマ、ニホンオオカミなど最初期の展示物が、ゾウ、ライオン、キリンなど動物園の大本命に変わっていく様子が描かれている。

本書でもう一つ異色なのは、写真の多さ。数ページ毎に動物の写真が掲載されている。当たり前ではあるが、草食動物の昔も今も変わらないぼけーっとした雰囲気がいい。欲を言えばカラーの方が見栄えはするが、ないよりは全然いい。

本書は上野動物園の歴史であるとともに、日本最古の動物園、かつナショナルセンター的な役割を果たした同園が受け入れる動物の試行錯誤の飼育を通じ、日本の動物展示、飼育方法の歴史も読み取れる。珍奇な動物を見て驚くという娯楽から、種の保存、冬眠など野生環境に近い飼育、行動展示など試行錯誤は今も続いている。著者の記述からは、原点の日本の在来種(土着の家畜は入手が容易どころか絶滅危機にある)飼育や「見て驚く」という最初期の動物園へ回帰しようという考えのようで、飼育される動物は変われど、動物への愛は変わらず、と感じた。