後記にある「言葉で深呼吸する」をもじれば、
言葉で散歩する
といった感じの詩集。いつも観る景色の散歩。
いつも一緒にいる自分の中への散歩。
読んでいると、
ああ、大人になることができたんだな
ああ、大人になってしまったんだな
と嬉しいような寂しいような気持ちになる。
でも、いつかまたこの本を開いたら、
きっと今とは違う何かを考えながら、
今と同じ感想を持つのだろうと思う。
一番最初にこの詩を読んだのは、森瑤子さんの小説”秋の日のヴィオロンのため息の”に引用されていたためです。それまで詩なんて縁のないものと思っていました。この詩は、私たちが子供から大人になったのはいつだったのか、子供の頃の記憶をよみがえらせてくれます。そして早く大人になりたいと思っていた子供の頃が懐かしく、大人になってしまったことがなんだか少し寂しく切なくなってくるのです。
秋の日の・・・の主人公も言っていますが、自分が思っていて言葉に出来ないことを優しい言葉で正確に言い表してくれています。
いつのまにか、この詩風景に自分が入り込み、子供になって、大人たちを眺める自分に気がつきます。