中原好きにオススメ
★★★★★
中原昌也とガルシア・マルケスを足して2で割った感じ。いまの日本で最もラディカルな作風の作家のひとりだろう。
デビュー作は、統一的なモチーフがわかりやすく、比較的読みやすかったのだが、だんだん拡散して、時間・空間を伸縮させる筆裁きがさらに自由になってきている印象。
なので、読み終わってみると、何を読んでいたか漠とした感じがするのだが、読んでいる間はずっと面白い。こういう面白さこそを「純文学」の醍醐味と言ってもいいんじゃないか、という気がする。
表題作などは、短い分量でスケール感のやけに大きな話を展開しているのが面白いが、もっとえんえんと続けられそうな話に思えるし、もっと読みたいという気持ちがして、終わったときにもったいない気分がした……。
あるいは芥川賞狙いの関係で短いのかもしれないが、であれば、今回の候補作(141回。本書には入っていない)で授賞してしまって、そういう枷を解き放ってやってもらいたいものだ。
「なんだこりゃ!?」と思えるかなり面白いところがちょいちょいあるのだが、とくにどろどろなポニーの帰還は急に「ペットセメタリー」みたいで最高でした。
「絵画」のほうは、時間的に短い間の話というのが新機軸? タイトルにふさわしく定型を脱したバラエティ豊かな描写がえんえんと続くのが心地良い。