全ての編曲を、「喝采」、「劇場」、「夜間飛行」、「あいつと私」などの編曲を手がけた高田弘が担当しています。ですから、ちあきなおみの歌声と相俟って、いずれの曲も、原曲の味を損なうことなく、メリハリの効いた、しゃれた歌に生まれ変わっています。
ボサノバ・アレンジの「どうせ拾った恋だもの」を『もうひとりの私』(昨年10月に復刻)のものと聴き比べてみるのも一興です。
どれもこれも素晴らしいので、後は好みの問題ということになりますが、私の場合は、「泪の乾杯」、「悲しき竹笛」、「フランチェスカの鐘」、「東京無情」が特に気に入っています。
偶然なのかもしれませんが、このアルバムが制作されたのが戦後30年目、そして今回の復刻が戦後60年目に当たります。その間、実に30年という歳月が流れたことになりますが、そういったことなど全く感じさせることのない、瑞々しさに満ち溢れた名歌唱満載のアルバムです。コロンビア時代の名盤の一つであることは確かです。