南部ソウルの名作曲家による73年のソロ作
★★★★★
マッスル・ショールズのフェイムやメンフィスのアメリカンといったスタジオで60年代から南部ソウルの名曲を作ってきたダン・ペンが、自らのビューティフル・サウンズ・スタジオで主に録音したアルバムです。おとなしめのジョー・コッカーといった感じの彼の声は使い古したジーンズのような耳障りで、元気はつらつなソウル歌手とは違った味がなかなかです。バックは長年の相棒スプーナー・オールダムをはじめとした面々によるカントリーの色が強い南部ソウルの音が中心ですが、70年代前半という時代を反映してかニューヨークのアル・クーパーのような都会的なストリングスやホーンの音使いも交えたり、不穏な響きのする音に乗って詩を朗読する曲があったりします。CCRのLodiのカバーや自作のI Hate Youのような歌心溢れる曲が目当ての人と70年代のなんでもありの雰囲気が好きな人、その両者にとってあっという間に過ぎていく30分あまりのアルバムです。