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ゲノムが語る23の物語

価格: ¥2,520
カテゴリ: 単行本
ブランド: 紀伊國屋書店
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   人間の設計図である「ヒトゲノム」。この暗号ともいえる塩基配列がすべて解読された。本書はこの歴史的な結果を受け、気鋭のサイエンス・ライターによって書かれた作品である。

   著者は、ヒトゲノム(=ヒト遺伝子の完全なセット)を「われわれの種と生命誕生以来の祖先の歴史を物語る『遺伝子語』で書かれた変転と創造の記録」と説明している。また、まえがきにおいて本書をゲノムに見立てて、各章を「染色体」、その中の物語を「遺伝子」、これらを構成する各単語を「塩基」と表現するなど、既存のヒトゲノムに関する作品とは異なったユニークな切り口で読む側の興味を引きつけている。

   ヒトゲノムは性染色体も含め、全部で23対の染色体に収められている。著者はこのそれぞれの染色体の上の、最も興味深い遺伝子の1つに注目した。そして、その遺伝子にまつわる、人間を取り巻くさまざまな問題(医学、生物学、言語学、心理学…)をまんべんなく、丁寧に解説している。

   一般的にヒトゲノムの解読は、難病の解決など医学の分野での応用が期待されているのが現実である。しかし、著者は再三「遺伝子は病気のためにあるわけではない」と述べており、医学以上に遺伝学にとって価値のあることだと考えている。そして、この「記録」を解き明かしていくということは、人間の過去を、そして自分自身を知ることにつながっていくのである。

 「ヒトゲノム」に専門的で近寄りがたいイメージがあるのも事実であろう。しかし、本書を手にすれば、ゲノムが少し身近なものに感じられるようになるかもしれない。(冴木なお)

まぁまぁ ★★★★★


生物学って分子生物学、生化学、遺伝学、発生学、系統学、生態学、細胞学、、、いろいろあるけど 私、曳地康時には
網羅的にっていうなら、Encyclopedic Biology --- from atoms to the globe (2004) pp1890 もいいよ。

だって、Molecular Biology of the Cell とか Molecular Biology of the Gene とか Molecular Cell Biology は
集団生物学や生態学は載ってないよ。


この本はそれから読もうね
「まえがき」から面白い ★★★★★
遺伝子に関する本を読むのは初めてでしたが、この本は「まえがき」からどんどん
引き込まれてしまい、一気に読破してしまいました。
今まで漠然と抱いてきた遺伝子のイメージが、この本を読んで一新されました。

遺伝子は、長い進化の歴史や情報を刻印した莫大なページ数の本である。
本が好きな私の細胞の一つ一つにも、遺伝子という不思議な本があり、
今も、これからも、何かが”書き込まれ”続けていくのでしょう。

”情報”という側面から見る生命も、面白いですね。
これからの生命科学の中核課題 ★★★★★
ゲノム解析がなされましたが、すでにポスト・ゲノムという領域が現れているように、
まだまだゲノムは謎だらけです。
本書は、このような状況下で科学的にかなりわかってきているもののなかで、
人が最も興味を示しやすい項目を、染色体の数に合わせて23の物語として展開しています。

この領域は「氏」か「育ち」かの論争で明け暮れていますが、
リドレーは、そのなかである程度の方向を示しています。
すくなくとも「育ち」論者の裏づけのない理論は論破しています。
「育ち」論者は社会科学の世界でまだまだ生き残っており、
最近ではデイヴィット・ムーアが「遺伝子神話の崩壊」で主張していますが、
形勢はどう見ても不利でしょう。

本書の発展系として「やわらかな遺伝子」があり、
ここで「氏」と「育ち」の論争に終止符を打っています。
ただ、この領域は自然科学での新たな発見によりどんどん証拠が集まりますので、
今後の研究成果が見ものです。
僕の体の中の軍拡競争 ★★★★★
初めてドーキンスの「利己的遺伝子」を読んだとき、人間が遺伝子の
乗り物だという見方がショッキングであった。それに慣れたころ
「パラサイト・イヴ」なる小説(映画)を読んで、ミトコンドリアという
反乱分子がフィクションとして、とても興味深いと思ったものだった。
だけど、これはフィクションじゃなかったんだ。これは生命の神秘なんて

きれいなもんじゃない。生命は僕が思う以上に狡猾で戦闘的だった。
23個の独立したゲノムの物語を読むにつれ、自分というものの
意味が変わっていくかも知れない。あまりに身も蓋もないゲノム達の
振る舞いに男たちはトホホと嘆くしかない。

遺伝子のわくわくする姿 ★★★★★
タイトルの通り、23章でそれぞれ一つの染色体について扱っている。「人間には遺伝と環境、どちらが大きく作用するか」つまり「氏か育ちか」とは昔から議論されていることだが、遺伝子の働きがわかってきた今その議論は尚更かまびすしい。著者はどちらの影響も分かちがたく結びついているし、どちらかに帰するのは無理だとごく健全な立場をとっている。

人間の受精卵から核を取り除いてチンパンジーの細胞の核を入れて元通り子宮に戻したらどうなるだろうか。遺伝情報はチンパンジーのものだから紛れもなくチンパンジーになるか、それとも細胞質などの周囲の環境に影響されて人間に近くなるか。もちろん倫理的に考えて許されるはずもない実験だが、遺伝子か環境かを考えるとどういう結果になるかは興味深ち„㡊€‚これに対して著者は実験を無論するまでもなく、遺伝情報に従ってチンパンジーになるに決まっていると述べている。これは断言できない事柄ではないかとこの部分だけは納得がいかなかった。

ハンチントン舞踏病のように遺伝子診断によって何歳頃発症するかまで分かってしまう遺伝病がある一方で、喘息に代表されるアトピーは何が原因か今もってはっきりしない。遺伝子が全てを決めるのでないことはもちろんだし病気を起こすためだけに存在しているわけでもない。その多様な働きぶりには魅了される。