すでに戦後ではない今「戦後詩」をひもとく
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大野新「言葉のたまり場」の冒頭「黒田三郎はのどの奥を癌にやられた/高見順はもうすこし下って食堂だった/言葉のたまり場を灼かれた/火の断崖(きりぎし)だった
『現代詩読本/現代詩の展望』のなかの「現代詩100選」アンソロジーの約半数が収録。鮎川信夫「兵士の歌」、中桐雅夫「ちいさな遺書」、田村隆一「沈める寺」、吉本隆明「火の秋の物語」など。
数十行にわたる長詩が多い中で、次の詩が最も短く10行である。
他人の空 飯島耕一
鳥たちが帰って来た。 地の黒い割れ目をついばんだ。 見慣れない屋根の上を 上がったり下ったりした。 それは途方に暮れているように見えた。 空は石を食ったうに頭をかかえている。 物思いにふけっている。 もう流れ出すこともなかったので、 血は空に 他人のようにめぐっている。