14世紀から現代に蘇ったファンタジー?
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原作は「La Divina Commedia」(神聖なる喜劇)で100歌からなる長編叙事詩。この本はその抄訳らしい。
1989年と199?年頃に金箔付の大判で出版されていたものが、今回はA5判の「普及版」、いわゆるソフトカバーで再販されました。中身の文章やイラストはほとんど同じなのですが、当然のことながらイラストのサイズは小さくなり ます。
書名にもなっているギュスターヴ・ドレによる挿絵は驚異的なリアリティーとファンタジックな雰囲気が特徴で見所満載です。
ページによっては文章の下地の色が変わっていたり、文章も、話し言葉のカギ括弧の入れ方、列の並びなどが微妙に変わっているようです。また大判ではイラストの縦横の向きやサイズが色々あったのですが、小さくなったためもあってかほとんどが同じサイズで掲載されており、文章とイラストの両方が同時に味わえる上にページが手軽にめくれて大変読みやすくなりました。
この作品は「地獄編」「煉獄編」「天国編」の3部からなり、作者ダンテ・アリギエリが、若くして亡くなった愛する少女「ベアトリーチェ」への思いを元に作り上げた感動的な「愛と信仰の物語」といった雰囲気のもの。一見キリスト教徒への教訓を表 した作品と感じるのですが、読了すると何ともロマンチックな、そして気高い物語とも思える作品と分かります。原題の「喜劇」という表現はそんな ロマンチックさに対するダンテの「照れ」なのでしょうか?(笑)(学術的には全く違うかも知れません。)
結末の「天国編」では、人間の存在を超越した宇宙と一体となるような、清浄な光に包まれるが如き光景が広がって素晴らしいです!!14世紀から現代に蘇ったファンタジーとも思える内容で、繊細優美な芸術に触れたいというような人にもお薦めです!!