まろやかな光は残照にも似て 古都を照らす
★★★★★
以前に「奈良を旅行する際に持っていく本とは」ということで いくつかレヴューを書いた。何か忘れ物があったと思ったが 思い出した。本書である。
すべてひらがなで書かれた短歌集だ。この本を読んでいると ひらがなには 不思議なまろやかさがあることが実に良く分かる。漢字は僕も好きだが 漢字のきびきびした感じに比べると ひらがなには まるみを帯びた優雅さを感じる。
そんな優雅さが 奈良を旅する際に感じる「懐古調な感傷」に実に合う。
一方 会津自身の註がついている。こちらは 漢字をごつごつ使った文語であり これはこれで響きは美しい。
この註があるので 本書を 奈良訪問の良きガイドとする向きも多いのだと思う。
しかし 僕は違うと思う。ひらがなの短歌がまろやかに光る。そんな光で事物を透かしながら 古都を辿る事が 奈良という場所には とても似つかわしいのだ。