無能な自己の諦観と受容
★★★★☆
<生涯身を立つるにものうく 騰騰として天真に任す・・・>望むと望まざるとにかかわらず、良寛には、世間の流れの中で、世間の王道に大手を振って生きることはままならず、自分の時間軸に沿って、人生の細道を自分の歩みで行くより他、ありませんでした。茫漠とした自問自答の歳月の中で、良寛は、ありのままの無力な自己を受け入れて、象の瞳のような、人生の悲哀を通り抜けた人の慈しみの眼差しで、世間で右往左往する小さき人々を、共感をもって温かく見つめていたように思います。スローライフとは、自分の生き方を責任をもって選びつつ、天の諸々の恵みに感謝して、他者との共存に優しく配慮する生き方をいうのでしょう。