本書の特色はまず、国旗と国章を左右に並べて解説している点にあり、これは日本で初めての試みである。国旗に比べてあまりなじみのない国章にもさまざまな意味が込められていることは、新鮮な驚きでもあった。しかも国章もカラーで印刷されていて、見ているだけで楽しくなる本である。また国旗の比率はそれぞれの国で実際に掲揚されているものを採用していて、大変信頼が置ける。戦後日本で発行されたこの種の本では、ほぼ例外なく比率を2対3に固定していたが、それでは国旗の正しい姿を再現していないではないかと、かねがね苦々しく感じていた。確かに国連本部やオリンピックで掲揚する時は2対3の比率であるが、これは比率に違いがあると国旗の大きさに差を生じ、ひいては国の間に上下関係をつけてしまう恐れがあるので、それを避けようとする苦肉の策に過ぎない。事実国連で発行している国旗シリーズの切手では本来の正しい比率を採用しているのである。この本によって正しい国旗の姿が再現されたことはまさに拍手喝采に値するといえよう。
国旗も国章も革命や政変でその姿を変えてしまう。世界が激動している今世紀はなおさらである。奥付けの著者紹介によれば、著者は四十年にわたり旗章を研究し海外の旗章研究者と親交が深いようであるから、そうした国旗国章の変化にも迅速で正確な情報を改訂版で示してくれることであろう。