著者は、脚本家、俳優、ミュージシャンと多彩な顔を持つ、「クドカン」こと宮藤官九郎だ。ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」で、クドカン節ともいえる軽妙な会話と、小気味よいストーリー展開を披露。映画『GO』の脚本では多数の映画賞を受賞し、新感覚の脚本家として注目を浴びた。本書は、宮藤の初めてのシナリオ集である。
ぶっさん、バンビ、アニ、マスター、うっちー、などドラマでおなじみの面々が繰り広げる物語のおもしろさは、活字の上でも健在だ。瀕死の主人公と、モノマネを連発する先輩とのやりとりなど、全編を通してユーモラスな場面で編まれた本書。死という深刻なテーマを含みながらも、湿っぽくならず爆笑させられるのが魅力である。また、映像版では聞き逃しがちな、登場人物たちのコントのような掛け合いも、あらためてシナリオ上で確認できる。巻末には「Vシネ」「長渕キック」「やっさいもっさい」など、関連キーワードを並べた木更津156語句解説を収録。この作品をよく知らない初心者にも親切だ。(砂塚洋美)